内容説明
逆賊の汚名を被せられた会津藩主松平容保は徳川慶喜から帰国を命じられ、江戸を発った。その後、会津藩士たちが藩邸引き払いの作業を急ぐ江戸の街は、東征軍への不安から治安が悪化していった。そんな中、浅草本願寺で旧幕臣たちが彰義隊を結成し、会津藩士鮎川兵馬らもそれに加わった。士道に殉じ“義を彰す”彰義隊は、上野の山に拠って官軍に対することになる。吉川英治文学賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
連雀
2
来週東京に行くのですが、半日ほど時間があるので上野の森美術館と上野戦争の史跡巡りをしようと思い立ち、上野戦争の顛末を描く4巻の途中から本巻を再読しました。東京の地理に疎いので今回はちゃんと地図で確かめながら読み直したので時間はかかりましたがその分面白かったです。2018/01/20
連雀
2
副題は「江戸開城」とありますが、ここで言う江戸は江戸城の事ではなかったようです。有名な勝海舟と西郷隆盛の江戸城明渡しのやり取りが無いばかりか、勝海舟の行為を相変わらずの口調で論難し続けているところ、実に面白い。彰義隊の結成から上野戦争の顛末が語られるわけですが、司馬遼太郎の「花神」では天才として描かれ、多くの信奉者を有する大村益次郎を徹底的に否定するところは、既に本書では定番の流れですがやはり面白い。戦闘シーンが多かった為か、今回は「小説」読んでる気分が今までで一番強かったです。2017/12/13
tenma
2
「江戸開城」と副題がついているが、「篤姫」ですら記載のあった江戸城明渡し場面がない。江戸時代の終焉を示す象徴的な出来事であったはずだが、本書では「士魂」に該当せずということなのか。▼結局、官軍が関東に入るまで幕府はほとんど何もしなかった。不思議なのは、その後の江戸の様子。本書を読む限り、官軍と彰義隊が睨み合ったという状態ではなく、双方の都合の良いように市中取締を行い、町衆は好みの側を応援した感がある。この辺は、吉村昭の「彰義隊」などで確認するしかない。▼さて、輪王寺宮の天皇即位は描かれるのだろうか。2013/08/12
東森久利斗
1
放火魔が消防士を制裁するようなもの。放火、掠奪、暴行、傍若無人、極悪非道、”無知強暴天威を畏レザル”、人倫に悖る諸行の数々。チンピラレベルの嫌がらせ、積年の恨みつらみの捌け口、勇猛果敢な薩摩隼人が聞いてあきれる。無教養の弊害、志なきもの人のうえにたつべからず。見たい、行きたい、激選の跡、無数の弾痕が残る上野寛永寺の黒門、彰義隊戦士の墓(荒川区南千住の円通寺)。敗者の生きざまを通して、近代日本が如何なる犠牲のうえに成立し、負債として現代に受け継がれているか。膨大な文献、史書を通してその実相に迫る。2024/01/12
ふとし
0
江戸城無血開城をよく称賛される勝海舟や西郷隆盛。しかし裏を返せば、勝海舟は負けが見えた段階で、幕臣にもかかわらず明らかな裏切り行為に走り、官軍に媚びへつらっただけだし、西郷隆盛にすれば戦わずして勝利を得られたがために、江戸城入場を果たしただけのこと。実際には旧幕臣たちを中心に「彰義隊」が結成され、江戸市中での戦いは始まる。教科書では決して教えられない裏がある。2013/01/03