内容説明
大阿闍梨恵果は異国の僧空海に、密教本流のすべてを託し灌頂を授ける。密教第八世の法燈を継承した空海は、密教界の最高位に即く。恵果は「東国へ伝えよ」の遺言を残し遷化する。空海の知識への渇望は吐蕃使節との交流にまで及ぶが、大同元年(806)、日本での密教流布に胸熱くして帰国。日本仏教界の巨人の求法の道を描く長編歴史小説。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りー
4
空海が唐土にいたのは、皇帝が徳宗→順宗→憲宗と次々代替わりした時期。順宗の実質的な宰相=王叔文の「貴国の天子をしっかりとつかまえておきなさい。それでなければ何もできません。」という言葉。彼の盛衰が物語の一つの核になっています。また、恵果の出家に纏わる恋の物語も素晴らしかった。歴史上、奇跡と言ってよい瞬間だったのだなぁ・・・。たった二年の時が、その後の空海をつくり、日本を変えていく不思議。こんなことって、あるんだ、と、作者によって描きだされた曼陀羅に改めて驚きました。出合いは時間の問題ではない。質なのだと。2018/04/22
ぶん
2
空海という主人公を媒体(で言葉あってるのかな)にして語られる中国を動かしてきた人々の想い。でもだけど主人公は空海で空海もまたアツい男なんだな。とにかく素晴らしい文章でこういう文章を書ける人になりたいとすごく思える本でした。 陳さんが書く、空海が日本に戻ってきてからの話が読みたい切実に。2016/04/14
ノノ
2
ようやく読了。唐時代の空海がなれない異国で空海らしく活躍する様が書かれている。当時の人の生活ぶりも分かって面白い。2013/09/06
YKSM
2
下巻では空海が灌頂(免許皆伝の儀式のようなもの)を受ける様子が描かれる。長年修行したほかの弟子を差し置いて空海が選ばれたわけだが、こうした超人ぶりが淡々と記載されているように感じました。 衰退期に入った唐を出国するところで物語が終わってしまうので、以降のことがちょと気になります。2012/07/15
鴨の入れ首
1
空海の入唐時代を描いた歴史小説の下巻です。彼が入唐していた時期はいわゆる「二王八司馬事件」とちょうど重なり、当時の唐王朝の複雑な政治世界の進み具合と絡めて描かれていました。大変興味深く、一気読みできてしまう程に面白かったです。2024/04/26