内容説明
法皇・孔雀院の夜毎の苦しみを解くために、陰陽師・土御門典明は糸息術をもって院の夢の中に入った。院の胸の上に、人の眠りを食らう夢魔・白猿を見出した。典明は祖父伝来の秘刀でその首をはねた。院の痛みは癒されたが、今度は、絵師・良達の娘・桔梗にとり憑いた。なぜか姿を現わした夢魔の挑戦に、典明は秘術を尽くして対決する。耽美的な平安王朝幻想ロマン。
感想・レビュー
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りりん
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陰陽師を主人公とした物語はその活躍を描くことが多いが、著作は違う。夢魔との衝突を描きながらも、歴史ある陰陽師の家に生まれた自分自身とその家についての葛藤が、その中で感じられてならない。物語の起伏は乏しく少々退屈ではあるが、物語の全体を覆う漆黒は怖ろしく危うげであり、息の詰まる葛藤を助長させているように思える。しかし、ラスト一行は闇がぱっと晴れたように光が差し込み、その空白を陽光が湛えたようでもあった。鮮明に映像が浮かび、思わず溜息がもれた。美しい終幕が、物語の質を一段も二段も底上げしたように、私は感じた。2013/09/06
丰
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Y-102007/10/25