内容説明
西征東伐に明け暮れるモンゴル帝国の政の頂点にあって、楚材は孤軍奮闘、政・軍・監の三権分立や文教政策に力を尽くす。モンゴルの破壊力を、民衆を守る警察力に転化する大目標があった。しかし、大ハンにつづき、彼に絶大な信頼を置いた太宗オゴディが没し、激烈な後継者争いが…。チンギス・ハンに仕えて２３年、楚材５２歳の冬のはじめだった。ユーラシアを舞台に描ききる、天才宰相の波瀾の生涯。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
49
三権分立や文教政策に力を入れる楚材。モンゴルの持つ破壊力を国民を守る力へと変えていかなければならないからでしょう。チンギス・ハンが亡くなったことで、壮絶な後継者争いが起こります。時代は刻々と動いているのですね。2022/07/05
もりやまたけよし
28
女真の金の政策でモンゴル高原の諸部族が抗争するようにさせられたのが、チンギス・ハンの台頭を促したというのは目からうろこでした。2021/05/16
フミ
23
モンゴル帝国・東アジア側で政治の基礎を固めた人物のお話、下巻です。前半３０頁ほどで、早くも初代・チンギスが亡くなり、２代ハーンを巡る争いになるかと思いきや、候補の3男、4男が「話の分かる人」でホッとしました。この楚材という方、政治、文化の教養だけでなく「野性的な民族に飛び込み、内側から変える勇気」というのが凄いですね…。その後、2代ハーンの下で、東アジア方面の政治制度を任されていくのですが、合い間に故国「金」の滅亡の話があったり。 馴染みの薄い時代のお話で、興味深く読むことが出来ましたが、後半が…。2022/11/17
James Hayashi
23
耶律楚材は漢語圏では評価が高いが、最近はチンギスハンの歴史的評価の見直しが進み、ペルシア語での一次資料によると、耶律楚材は殆ど明記がないらしい。つまり彼の死後、国内で功績が上乗せられている可能性が高いという。しかしユニークな人材で歴史を振り返るには重宝できると云えよう。2020/03/27
Akihiro Nishio
23
ライバルの長春真人は高齢のためほぼ何もしないまま退場。一方、耶律楚材は、チンギスの死後、監国となったトゥルイとその後大ハーンとなったオゴタイを補佐することで大躍進。徴税や司法を知らないモンゴルに少しずつその仕組みを導入し、中原を戦禍から守る。とは言え、金は滅び、伐宋作戦は継続中だが。危ういバランスの中で最大限の仕事をしたと思う。個人的には、オゴタイがもう少し長生きして、モンゴルがどこまで西に行けたか見てみたかった。ヨーロッパには迷惑な話だがw2017/07/07
