内容説明
楚材とは「外国で用いられる人材」を意味する。自国を滅ぼした他民族に仕えた父が、わが子に与えた名だった。長じて儒仏の教えと天文を修め、北の草原から押し寄せる圧倒的な力から、人命と文明を守る志を得る。チンギス・ハンに召された時、楚材28歳。遙かサマルカンドへ至る西征に従い、「焼き、殺し、奪い、去る」モンゴル軍の破壊の様を目の当たりにするのだった。独自の歴史観による大ロマン。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
169
チンギスハンを覇者にした名宰相耶律楚材を 描いた本。あまり馴染みがない人物を 丹念に描く。 耶律楚材を私は知らなかったが、 本の帯に 諸葛孔明を越えた男と 書いてあり、興味を覚えて読んだが、 やや地味な感じだった。 それにしても、物語自体は雄大である。 「草原の夢」のような雰囲気が 伝わってくる。2014/05/31
優希
49
独特の歴史観から耶律楚材という人物を見ることができました。人命と文明を守る志を持つことで、チンギス・ハンに召されたのでしょう。モンゴル軍の破滅を目にした楚材は、どのように動くのか。下巻も読みます。2022/07/05
イトノコ
25
再読。1190年、金国。金に滅ぼされた遼王室の末裔として生まれた耶律素材。他国で役立つ人材たれと名付けられた彼は、折しも金に侵攻せんとするモンゴル帝国に接近する。/ちょうど先日読んだ「蒼き狼」後半を補完するような内容。その名に込められた願い故に、国家や民族、宗教を超越したグローバルな視点を身につけた耶律素材。日の出の勢いのモンゴル帝国を新たな世界秩序と見込みながら、彼らの凶暴性を制御するためチンギス・ハンに近づく。そのためには師の万松老師も敵視していた全真教の長春真人とも協力し合うのが印象深かった。2021/05/27
もりやまたけよし
25
耶律楚材をとおしてジンギス・ハンからそのあとのオゴディあたりの歴史をサラッと読むことができた。2021/05/16
Akihiro Nishio
24
昔「蒼き狼と白き牝鹿」というチンギスハーンを主役にしたゲームがあって、中盤最も大事なことは、耶律楚材と長春真人を手に入れることであった。その2人が登場。しかし、意外にも、長春真人は既に老人で教主、上巻の最後でようやく合流。耶律楚材も今のところ大した活躍はしない。楚材という名前が、楚の人材が他国で重用された故事に由来したことを知る。契丹族から早くから合流した耶律阿海なる人物が最高位の軍事顧問に就いていたことなどをはじめて知った。青春時代にゲームで活用した2人の人材が、後半で大活躍してくれることを期待。2017/07/04