内容説明
「死」への想いを心に抱き、南の島に旅した作家が、サンゴ礁の渚で漁師の老人に出会った。奇妙に息のあったふたりは、老人の家で酒を酌みかわすことになった。酔いが回るにつれ、作家は37歳で自殺した父のイメージを老人に重ね合わせる―亡父・田中英光との葛藤と和解を描き、自らのアイデンティティの回復を語る著者初の「私」小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Lazy8
1
知らなかったのか聞いたけれどもその当時は心に残らなかったのか、田中光二さんは田中英光の息子だった。英光をたどるうちにこの事実を知り、光二さん唯一の私小説であるこの本に行きあった。英光の評伝と作家の南の島への旅を重ね合わせる手法で、それは作家の心の旅であり、英光の“後日談”のようでもある。はちゃめちゃな生活で事実上自分を捨てたような父親を許せるようになったという旅の結末。英光が云々ではなく、この世を去ったが血を分けた家族との、長きにわたった和解。2018/03/19
Hiroshi Kitagawa
0
波照間と嘉名老人と・・ 無頼派の父と和解。2016/06/26
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- 和書
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