内容説明
3年ぶりに再会した高校時代の同級生・飛楽太郎は、まるで言葉を失った寡黙な男に変貌していた。3カ月後、ぼくは見た。早朝の河原でサックスの練習に打ち込む彼の姿を…。精神・暴力・言葉をめぐって、70年代の一光景を鮮やかに写す表題作。奥日光連山で山岳清浄行に挑む5人の若者の、肉体と精神の限界に立さたれる厳しい試練と、組織をめぐる昏い罠を描く芥川賞候補作「滝」の2篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Toshi
3
「その言葉を」「滝」収録の著者初期作品。どちらも素晴らしい。「滝」のドキドキ感ときたら。。絶対読んだ方がいいです。2021/09/18
半兵衛
3
表題作と「滝」の二作収録。表題作はノスタルジック。「教授の目をくらましては誤魔化しの上にまやかしを糊塗して」こういうの好き。一つの文章で一段落を作ってしまう勢いはもうこの頃からあったのだな。「滝」は宗教団体内の若者組に降りかかる陰謀と災難。後半の勲の気持ちを自分なりに同情しつつ読む、読後しばらくは現実世界に戻ってこれなかった。ミステリィ的要素もあったし再読をしたいが当分時間をおきたいと思う。2014/01/04
ゆるふわ市松人形
2
表題作は、何かを失っていくのが、主人公(彼も失っているものはあるが)ではないという、喪失の話。再生し得ないという暗示の、ラストのちょきが口をへの字にさせた。 滝は、殺意があり動機がありトリックもあるのに、ミステリーなのかと言われると違うかなぁ?という作品。 救いがなさすぎて、エンディング後に全員自殺してるんじゃないかと不安になる。 総評すると好き。2020/10/16
かりかり
2
☆☆☆再読。『滝』の方は三島由紀夫みたいだった。2020/03/24
Ichiro Toda
2
表題作はシンプルなストーリーと淡々とした語り口でグイグイ読まされてしまうけど、一体何を感じたら良いのだろうかと疑問に思ってしまう自分の理解力のなに笑ってします。なんだろう、青春を閉じ込めているようで、そして何かを語りたいようであんまり伝わらないというか。最後やっちゃったよと言われても、もっとその前の段階でやっちゃっているのでは?むしろ登場したときから一貫してやっちゃっているのでは?と思ったりして話が入って来なかった。併録されている滝は文学臭が半端ではなく、何かの公式に従って書かれているような印象を受けた。2017/07/17