内容説明
素敵な体験を綴る初エッセイ。第13回日本文芸大賞エッセイ賞受賞。
目次
宛名のない絵葉書
西表の青年・由五郎君
内蒙古の赤ん坊
ロンドンからの電話
小田先生のこと
密航
善光寺詣り
胡椒のお風呂
催眠術の話
サラゴサの祭り
お心入れ
一の太刀
ジャガーの寝心地
八甲田の木
十二支のコンパス
ホースメンズ・ハット
北極のインド人
お姫様の膝かけ
殿様の血
兆治さんへの花
ウサギの御守り
都荘の表札
あなたに褒められたくて
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
256
この本には、高倉健の最晩年に突如現れた「謎の養女」の真実(?)を解くヒントが書かれている、ような気がする。自らの性格を「偏屈」で、思い込んだら貫き通さないではでいられない「性急さ」と解説する健さん。だから、自身の人生のしまい方を、この養女ひとりに託したのではないか。1989年に90歳で亡くなった母・タカノさんに、ただただ「褒められたくて」生涯205本の映画に出演。「辛抱ばい」と、言っていた母の口癖を胸に刻んで駆け抜けた。2020/11/07
のっち♬
163
仕事からプライベートまで著者の素敵な体験を綴ったエッセイ。人生の旅路は出会いと別れの繰り返し、彼は一期一会の煌めきや憧れを殊更大切にして自らを高めてきた。これが人との距離を置くことにも繋がったりして、優しく温かい文面の隙間に孤独や哀感が漂う。離婚も相当堪えたようだ。中国の母子写真、激励の電話などファンエピソードでの紳士ぶりはいかにもだが、胡椒風呂・催眠術の悪戯や母親とのやりとりで見せる無邪気さは人間臭い一面。仕事とプライベートで逆転する心と肉体の規制関係、その激しいギャップは生き方のストイックさを物語る。2021/11/10
yoshida
140
高倉健さんのエッセイ。俳優として生きての様々な出会いや思い出について書かれています。やや読みにくい部分もありますが、じわじわと染み入るような味わいがあります。最も印象に残ったのは、標題作ですね。母に褒められたくて、俳優業を勤められた。「八甲田山」の過酷なロケを心配する母。肌色のバンドエイドで隠しているあかぎれを唯一、見つけてくれる母。ロケで告別式に間に合わない哀しさ。高倉健さんの母親への想いが詰まった章だと思いました。最後の一文、「あなたに代わって、褒めてくれる人を誰か見つけなきゃね。」が胸に残ります。2020/02/02
あつひめ
98
いつの日も心にとめていた最愛の人は母上であったか。私の印象では男は背中で語る男の印象があっただけに、役者であると共にひとりの人として語っているところがよかった。無口な健さんも、若い頃はオチャメないたずらもしたようだし…。これからは健さんを見る目も変わるな…。よい意味で…。2013/10/09
Willie the Wildcat
87
心の内に秘めた喜怒哀楽を朴訥と語る・・・、そんなイメージの著者初エッセイ。氏の人柄が滲むエピソードが多々。『西表の青年・由五郎君』や『お姫様の膝かけ』に垣間見る物欲?!はたまた、『胡椒のお風呂』や『催眠術』での茶目っ気などの意外性。但し、”らしさ”を感じるのは『兆治さんへの花』。以前NHKで見た”手紙”の数々。感じたことを文字とする、行動に移すのが氏の真骨頂ではなかろうか。無論表題『あなたに褒められたくて』も心に響く。いつまでたっても(俳優)ではなく息子。感謝ですよね。共感。2016/07/24