内容説明
一人で部屋を借りさえすればいつだって好きなときに彼女と二人きりになれるとばかり思っていた―なのに、思うようにはいかない勝利の一人暮らし。バイト先の「風見鶏」では失敗を重ねるし、勝利への思いを断ち切れずに苦しむ星野りつ子が気にかかる。何よりかんじんの「かれん」が離れていこうとしている…。波乱含みのシリーズ7弾には星野りつ子の独白を収録。
著者等紹介
村山由佳[ムラヤマユカ]
1964年7月東京都生まれ。立教大学文学部卒。会社勤務等を経て、93年「天使の卵」で第六回小説すばる新人賞を受賞。03年「星々の舟」で第一二九回直木賞を受賞
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感想・レビュー
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hisato
91
再読了です。なんとなく上手くいき始めたかと思ったら、なんとなくギクシャクする二人ですね。今回は主に勝利が悶々しているところが多いですが、サブタイトルの通り、まさに勝利とかれんの関係も"坂の途中"という表現がピッタリと感じました。その一方で原田先輩の意外な面が見れたり、りつ子の話は結末が分かっているだけに出だしから切なすぎたり、と周囲の人たちもしっかり描写されていて、読んでいてどこか落ち着きます。 後書きはいつも何かアクシデントが書かれているような気が・・・w2016/12/08
優愛
72
「平気で言えるわけないもの」同じだよ、分かってるよ。自信があってこそ生まれた言葉はあっけなく壊れていく。勝利の一人暮らしはやはり裏目に出てしまいました。離れた分だけ知らないかれんが増えていくことが、誰より傍にいると自覚している勝利だからこそもどかしくてつい強くあたってしまう。でもそんな溝はすぐに埋められるくらい二人の想いは強かったことを実感します。りつ子の縋るような恋心にも毎度ながら心焦がれるのです。かれんの介護福祉士を目指すという決断の理由が素敵。勝利がまたおいしいコーヒーを入れられる日はもうすぐ。2014/12/10
とら
67
勝利はひたすらに真っ直ぐである。色々と、いちいち深く考えすぎてしまう。でも最後には、自分なりに考えた結論を、はっきりと全て素直に相手に伝えるから、本当に好感が持てる人物だと思う。そんな生真面目な、一途な勝利だからこそ…やはり何となく星野に対して未練を持ってる感じが嫌なのである。自分は割り切ってると思ってるだろうけど、多分これはまだ割り切れてない。でもその気持ちも本当によく分かる…何だろうこれ、本当に男性の気持ちを熟知していらっしゃる…あれ、村山さんって女性だよね?(笑)人間観察が上手いのだなあ、と感じた。2014/03/12
だまだまこ
65
シリーズ再読、7作目。風見鶏での失敗や、彼女の考えを聞けない焦りなど、気持ちが空回りしがち。学生時代読んでいた頃は、勝利に共感しきりで、なんでこんなに頑張ってるのに上手くいかないんだ!って辛かったけど、今は自分のことをしっかり考えたいというかれんにも、恋にうつつを抜かしているバイトに喝を入れるマスターの気持ちもわかって、10年も経つと目線も変わって、少しは私も大人になったのかしら…なんて。このあたりから原田先輩がいい味出してくる。ガサツなようで、ハッとするようないいこと言うから妙に感心してしまう。2020/05/10
えりこんぐ
64
シリーズ7巻目。せっかく一人暮らしを始めたのに、なかなかかれんと一緒に過ごせないショーリ。悶々と悩んで、バイトでも失敗だらけのしんどい回だった。かれんに新しい目標ができて、今後の2人はどうなるかな。2人で過ごす時が楽しいからって、問題を先送りしちゃいけないよね。【積読71】2020/08/24