内容説明
妻子と別れ、草木染作家の奈穂と新しい生活を始めた作家・斎木。蔵王山麓のすがすがしい田園で、ゆったりとした時の中に身を置く…。斎木は喘息の治療を続けながら小説を書き、奈穂は染物のかたわら家庭教師で生計を立てる。周囲の人たちとの出合いと触れ合い、移り行く季節の中で、本質的な愛の在りかを探る長編小説。第一回木山捷平文学賞受賞作。
著者等紹介
佐伯一麦[サエキカズミ]
1959年宮城県生まれ。84年『木を接ぐ』で「海燕」新人文学賞、90年『ショート・サーキット』で野間文芸新人賞、『ア・ルース・ボーイ』で三島由紀夫賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
博多のマコちん
5
ずっと以前に読んで印象が良かった単行本を23年ぶりに再読。仙台を離れて蔵王山麓に移り住んだ小説家と草木染作家夫婦の日常を落ち着いた筆致で描く短編連作集で、静かにゆっくりと読み進むことができ、心地良い。2021/02/07
ライム
4
離婚して、子供達や都市生活とも別れ、地方の山村での新生活…でもそれが全然暗くない。資金が無いから廃屋同然の民家を自力DIYで改修やってのけ、染物家の新パートナーとともに田舎暮らしを楽しんでる風の、どっちに転んでもプラスに捉えて著作に落とし込んでゆく逞しさに、尊敬の念が高まった。ライトフィールドの話の「自尊心を傷つけられてもそれはかけがえのない自分に相応しい場所として守るのだ」のマインドで、水道管も凍る厳冬を乗り越えた強い適応力は、私も参考にしてゆきたい。2025/04/26
kuribosu
2
日記に書く程度の日々のちょっとした出来事を描いてるだけの作品だが、質素な生活ながら、仕事を持ち、いろんな人々と交流し幸せに暮らしてる様子を読むと、何か、ほっとした感じがして、大仕掛けがないのに惹きつけられる、いい作品だと思いました。2017/04/26
...
2
いつものように何もない日常がそこにある。ただ保坂和志のそれとはちがって、こちらは風景に囲まれて生きている感じがする。土地があり、人がいる。2014/11/10
れんげ堂
1
何気ない日常が美しい平易な文章で綴られていて、懐かしい感覚になりました。 2020/01/13