内容説明
美貌と才能とお金、そして幸せな家庭。全てに恵まれた作家の「私」は、執筆に専念するため、マンションを借りる。それは、担当編集者の三浦くんと甘い蜜の時間を過ごすためでもあった。やがて私は、隣の古アパートに住む、いわくありげな女達をもとに物語を紡ぎ始める。暗い過去を匂わせる101号室の大女。ヒモ男に寄生されている102号室の美女…。妖気と腐臭に満ちた妄執奇譚が、今、幕を開ける。
著者等紹介
岩井志麻子[イワイシマコ]
岡山県生まれ。1999年「ぼっけえ、きょうてえ」で第六回日本ホラー小説大賞を受賞しデビュー。同題の作品集で山本周五郎賞、『tr´ai c^ay』で婦人公論文芸賞、『自由恋愛』で島清恋愛文学賞を受賞
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感想・レビュー
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90ac
47
「ぼっけえ、きょうてえ」を読んでいたので、僻地の因習や方言というイメージが頭にあったのですが、全く雰囲気は違います。四つの短編が入れ子になっている作品で、第三話が岩井さんの本領発揮ってところですね。シュールなエログロホラー。たまりません。この中の“二つの月”は村上さんの『1Q84』を思い出しましたが調べると岩井さんのほうが先ですね。それにしてもやたらと生殖器が出てきて笑いが出ます。単行本化で付け加えられたという序章と終章がまたいい味を出していて最後まで楽しめました。2017/09/02
ぐーたら
37
邪悪だわー。花、鳥、風、月の四編で完成する連続短編集。独特なくせの強い湿った妖しい雰囲気。愛情が憎しみに変わる瞬間……艶かしく痛々しい女どもの儚い幻。妄想と言えどとんでもない奴しか住んでないなあのアパートw(゜д゜)志麻子さんテレビでも大分卑猥な発言やぶっ飛んだキャラのせいか無駄に説得力あるというかギャップを感じさせない所がすごいわ(°_°)‼2017/01/02
Gemi
21
これは有吉反省会で著者を見て気になって買ったやつだ。あの猫のコスプレで「黒アワビ!」って言ってる姿を見て完全に侮っていた。しかししかし、読んでみるとなかなか面白いではないか。変質ぶり、妄執ぶりはあのまんま想像通りだけど、文章はさすがにプロ作家のそれだった。主人公もおそらく自分を描いているのではないかと思わせる。ウィークリーマンションに缶詰の女流作家。その窓から見えるしがない安普請のアパートの住人を主人公にした物語を花鳥風月の四編紡いでいく。もちろん妄想の生活を。そして最後は…嫌いじゃない、いや好きかも。2020/05/14
ざるこ
17
岩井さん初読み。作家の女がマンションを借り、隣りのアパートの住人たちを主人公に花・鳥・風・月を題目として物語をつくる。邪悪な心の持ち主たちが殺人に至るのだけど、腐臭、生殖器官…しつこいぐらい出てくる言葉にうんざり。「妖気」とかいう雰囲気ではなく、ただ気持ち悪い言葉を並べただけに感じる。鳥と花の話はそれなりに読めましたが幻覚世界の月の話は意味わからん。幻覚だからと許せる範囲を越えてるかと。なんとか最後までと読み進め終章での展開はよかったですが読み終わった後に何も残らない。もう内容覚えとらん。合わなかった…。2018/10/16
菟原手児奈
11
『いずれ檸檬は月になり』は気味が悪くも幻想的で美しいです。2016/10/30