内容説明
ロサンゼルスの日系企業で働く探偵のサム永岡は、一人の若者を探すように命じられた。国境に近い町で見つけた彼は、天使のような笑顔を見せながらいきなり発砲してきた―。人としての境界を越えた者と、そんな息子の罪を贖おうとする父親。ふたりにかかわった永岡もまた、内なるボーダーラインを見つめる…。重層的なテーマが響く傑作長篇。
著者等紹介
真保裕一[シンポユウイチ]
1961年東京生。アニメーションディレクターを経て作家に。91年『連鎖』で江戸川乱歩賞を受賞。96年『ホワイトアウト』で吉川英治文学新人賞、97年『奪取』で日本推理作家協会賞と山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
94
ロサンゼルスを舞台にしたハードボイルド作品である。欲望の街で 犯罪に手を染めた人々の 家族の苦悩をハードタッチで描く。 安田信吾をひたすら追う過程で、様々な 家族の悲劇が語られていく…伝統的で懐かしい 昔ながらハードボイルド小説だった。2024/01/23
扉のこちら側
88
2018年176冊め。最近報道で目にする様々な事件を思わずにいられなかった。作中の幼い頃から天使のような笑顔で昆虫や妹に残虐な行いをする息子は、精神鑑定でも異常は認められなかった。にもかかわらず通院やカウンセリングを何度も試みた両親の努力は実らず、やがて息子は人としての境界を超えてしまう。現実ではどうだろう。(続 2018/06/09
さっとん
51
真保さん2作目。 序盤はアメリカが舞台なのと堅い雰囲気に少し怯みましたが、読み進めていくうちにどんどん引き込まれていきました。 「生まれながらにして犯罪者」は存在するのかというテーマは非常に難しいですね。 子供を持つ立場としては非常に考えさせられる一冊でした。2018/08/08
再び読書
33
人の親にとってはものすごく重いテーマ、自分の息子が血も通わない人殺しであった、他人は勿論妹、母親、父親まで手に掛ける。子供の頃に残酷な事をする度に、諭し、怒り、言い聞かせた事がまったく意味をなさなかった。有る意味現代のホラーなのかも知れない。また最後に主人公が親になるところで終末を迎える。わが息子に何の躊躇も無く射殺される父親の空しさと逆にその事で救われてしまう悲しさが残酷2012/09/10
Walhalla
31
米国で活躍する日本人私立探偵が主人公のハードボイルド作品です。「生まれながらの犯罪者」というのは存在するのか、というテーマでした。もし自分の子がそういう人間に育ってしまったとき親はどうするべきなのか、非常に難しい問いかけですね・・。前半は毎ページのように飛び出していたアメリカンジョークも、後半はすっかり鳴りを潜めたように、とても重く悲しい物語でした。2018/01/17