内容説明
義母の富江は心の底から喜んだ。孝之介が文壇最高の権威「日本文芸大賞」の候補になったというのだ。これでもう思い残すことはない…。忽然と姿を消した富江。その行方を気に病みながらも、孝之介たちは選考結果を待つべく「プリズンホテル」へ。果たして結果はいかに?懲役五十二年の老博徒や演劇母娘など、珍客揃いの温泉宿で、またしても巻き起こる大騒動。笑って泣ける感動の大団円。
著者等紹介
浅田次郎[アサダジロウ]
51年東京生。「地下鉄に乗って」で第16回吉川英治文学新人賞、97年「鉄道員」で第117回直木賞、00年「壬生義士伝」で第13回柴田錬三郎賞受賞
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ろくせい@やまもとかねよし
392
93年から毎年刊行された4部作の最終刊。あとがきの創作回想は貴重で4部の変遷を少し理解させた。清々しい読後感。生きる尊さを再確認できる生身が籠もった傑作シリーズ。最終刊も風刺に充ち満ちている。いや確信的に不自由で不寛容な社会に警鐘する。学生運動の政治的矛盾、不適当な法運用、血縁のみで決定する家族観、差別用語と称する表現規制、平然と存在する不平等。エリートが科学や合理の下で構築する社会は虚像だと表す。淀みのない利己は尊い。それは他者の生きる原動にも。そんな非科学で非合理な振る舞いこそが人間の尊厳だと表すか。2020/02/24
HIRO1970
313
⭐️⭐️⭐️⭐️久々の浅田さん。通算38冊目。夏秋冬を敢えてそれぞれの季節に読んで満を持して4月に最後の春を読みました。一見面白おかしいだけのピカレスクかと思われがちですが、放免櫻の粋な計らいや、幸せの足し算と引き算のバランスの良さにまた酔いました。設定の過去の話は別として、非常に激しいアウトローな話の様で実は一人も死んでいない事に気付かされます。またどの季節も僅か1日か2日の話であり、浅田さんが職業作家になる前から非常に綿密に話を構成して緻密な組立で表現している事に気付かされます。皆さんにオススメです。2016/04/26
三代目 びあだいまおう
298
見事な大団円!そしてようやくわかりました!読んでいて自分の喜怒哀楽がリアルすぎた理由!1人1人の境遇や言葉が物語として伝わって来ないのです。なぜかとてもリアルで、吹き出しちゃうし、涙落ちるし、怒りに震えるし!1人1人をどうしようもなく好きになるし、直に話を聞いてるし、一緒にワチャワチャしてるし。そう、私ずっとプリズンホテルにいたんです!その場のスッチャカメッチャカに私お客としてずっといたんです‼️読み手にこの体験させるって凄いことですよ!そして今までよりホンの少し、周りを愛したくなる開花の春でした‼️🙇2020/05/02
ehirano1
279
楽し過ぎたプリズンホテル。終わってしまってとっても寂しいです。四季を通して描かれたプリズンホテルは一見、泣き笑いストーリーが目立ちますが、実は『愛』を描いたものではなかったではないかと思いました。物語の10年後の続編を強く希望しています!2023/01/13
seacalf
235
最終巻。嵐のようなドタバタ劇は健在。これが全て気持ち良く着地して纏まるのだから凄く爽快。今回も老博徒やクセのある女優と娘、田舎教師、編集者、笑って泣かせる面子がたっぷり暴れてくれる。そして木戸先生。胸内の思いに反してすぐ悪さをしてしまう天邪鬼な態度。ここまで酷くはないが我身を顧みてチクリとする。偏屈は変わらないが、終盤にしっかり泣かせてくれるので最後まで見届けて良かった!この先ちょっと古めかしいホテルに泊まったら、きっと想像してしまう。ここがプリズンホテルだったらなと。清濁併せたこの小説はやっぱり面白い!2022/08/16
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