内容説明
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?柴田錬三郎賞に輝いた山岳小説の新たなる古典。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
205
『氷壁(井上靖)』のエベレスト版を部分的に彷彿させ上巻は一気読みでした。山(=山に登ること)とは人生そのものなのか?どんな『解』が出てくるかとっても楽しみです!2019/10/12
ぷう蔵
153
なぜ、人は山の頂を目指すのだろう。そこに山があるからと言う人がいたが、それが正解なのだろうか。今日も北アルプスの山々は悠然、泰然として我を見下ろしている。あの頂きに神々がいる。2016/07/27
みっちゃん
135
夢枕作品は【陰陽師】【黒塚】しか読んでおらず、作風の違いに驚く。やはり懐が深い。それにしても何と厳しい世界。正に死と隣り合わせ。登山の歴史を変えるかもしれぬカメラとフィルムを何故持っているのか?迂闊に近づけぬヒリヒリした強烈な個性の持ち主。彼が身を潜めるネパールの猥雑な喧騒に自分も身を置くような錯覚に囚われる。終盤は突如、サスペンスの様相を呈し、全く目が離せない。取り急ぎ下巻へ。2016/02/22
修一朗
130
実在した登山家二人をモデルにしたエヴェレスト小説,圧倒される読み応えだった。未踏峰ビッグジャイアンツが残っていたころの,昭和の山屋の面影を残す男たちの物語。昭和の山屋は死と隣り合わせだったのだ。エベレストの山々へのアタック,カトマンドゥの街なみ,ネパールの民族,みっちりと描きこまれているディテールが息詰まる臨場感だ。山岳小説はこうでなくちゃ。登攀シーンを端折るなんてのはもってのほか。カメラの謎に迫るところもなかなかのミステリー。続きは下巻で。2016/01/09
ケイ
123
何人もの語りがあり、時代も交錯する。マロリーは登頂したのか。マロリーのカメラはどこに。カメラは何を写しているのか。そして孤独で偏屈な天才登山家羽生。それら全てを追っていく深町だ。全体を結ぶ肝心の深町に魅力があまり抱けず、後半に手をのばすも高揚感は期待ほど抱けず残念。2016/01/05