内容説明
恋敵への呪咀の念が、過去の“蠱毒”を甦らせ、女子大生の胎内に蟷螂が宿る…。短篇処女作の「蠱」をはじめ、カメラマン志願の青年の“眼球すりかえ奇譚”「浄眼」や、弥勒信仰をテーマにした、戦慄の“生体ミイラ村物語”「桃源郷」など、学園を舞台にした5篇を収録。乾いた怖さが心地よい、「現代の怪談」の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nuit@積読消化中
102
【日本の夏は、やっぱり怪談〈其の一・和編〉2019年】イベント参加本。虫が苦手だったためにずっと積読にしていましたが、やっぱり読もう!と「蠱」のグロテスク部分はなるべく想像しないように駆け足で読みました。加門七海さん特有の民俗学的知見が散りばめられた安定の5作品。個人的にはミイラ信仰をテーマにした「桃源郷」や、形代という人形を扱う呪術をもとにした「分身」が興味深く読めました。やはり加門七海さんの作品は面白いです。2019/08/09
夜間飛行
56
何とも無気味…まず、語り手の正体がつかめない。その独白は、普通の女子大生としてはかなり違和感がある。この主人公の妄想的人格そのものが怖い。さらに「巫蠱(ふこ)」という、虫を共食いさせて人を呪い殺す呪法が使われる。そこに御崎(みさき)という気味の悪い教授が一枚噛んでくる。客観的叙述…突然の感情表出…そこに被さってくる大学の情景。文体そのものが意識の多重性と粘っこい攻撃性を露わにしながら、巫蠱のパワーへと読者を引きずりこむ。呪法を使う人の心理をまざまざと見せられ、恐ろしいけれど稀有の体験をしたような気がした。2014/05/26
TATA
44
たまには怪奇ものでもと一読。加門さんの作品は「祝山」以来。こちらは気味の悪い短編を五作収録。会話とか文の調子は軽快な感じなのですが、どれも即身仏、呪いとオカルト度も高くてどよーんとした内容。各短編に共通して出てくる御前教授が淡々と破滅に導くのが一番薄気味悪いのです。却って短編連作にしたことで作品のグレードが上がったように感じますね。作者のあとがきで更にもう一段気分が沈みます(褒めてます)。2019/12/11
Yu。
27
現実と妄想の狭間でもがき苦しむ者達の溜まりに溜まった念が更にもう一段恐怖を膨らませる事となる5つの連作幻想ホラー。お気に入りは、怨みを強く持った雌カマキリの偏執さほどタチの悪いモノはない「蠱」。男性がいないという寒村で未だ続く忌わしき因習の謎が明かされていく途中でのなんとも言えなさ加減がたまらなく怖いが、終わってみると美しいとも感じてしまうその世界観に魅せられる「桃源郷」。と他も充分満足いく作品ばかりで気づけばニンマリ顔にさせられる。またほぼレギュラー出演の“御前教授”をメインとした物語も読みたいものだ。2015/07/22
あたびー
25
#日本怪奇幻想読者クラブ 一人称で語られるホラー集。どの話でも語り手がどんどん変になっていく。巫蠱、邪眼、即身仏、学校の怪談、形代…そこにチラホラと絡む民俗学の御前教授。どれもこれもイヤさ満載のガッツリ系ホラーです。色々不穏なときは却ってガッツリホラーに浸って毒を持って毒を、いや邪を祓う気持ち。なんとなくスッキリ…2020/03/01