内容説明
幕末。会津に逗留する漂泊の刀装金工・河野春明は彼の作とされた寸分違わぬ二枚の鐔に遭遇する。流転を重ねたこれらの鐔の真贋をめぐって、老金工の意地と若き刀匠の誇りがぶつかる。謎を斬り、鉄をも断つ激浪の風が会津から京都、箱館へと吹き渡っていく。和泉守兼定、佐川官兵衛、唐人お吉、土方歳三、時代の波間に泡影のような花を咲かせた男女の数奇な出会いが織り成す連作歴史抒情詩。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
28
政奉還前後の世相を背景に、河野春明、古川友弥、佐川官兵衛、斎藤きち(唐人お吉)、土方歳三とリレー形式に話しをつなぐ短編集です。土方以外はメジャーじゃない歴史上の人物ですが、本作品を読むうちに興味が湧きました。中でも「風色流光」は薩長から鬼といわれた官兵衛の激烈さが印象的です。本作品は、歴史に埋もれた一コマをミステリタッチで独特の視点から描いており、著者らしいこだわりが見てとれます。(龍馬がけちょんけちょんなのは、それはそれで面白くはあります)。惜しむらくは刀の物語で統一してくれなかったかことでしょうか。2018/05/25
rei
5
連作短編集。登場人物が少しずつ重なり、物語を紡いでいく。金工の河野春明~刀鍛冶(兼定)古川友哉~会津の侍、佐川官兵衛~唐人お吉と呼ばれた女~新選組副長、土方歳三。一篇ごとに「謎」があり、それが解かれる幕末時代ミステリといった感じだろうか。あまり幕末の歴史の大筋にはかかわってこないし、物語はオリジナルなんだけどその物語の裏にしっかり幕末の匂いは感じとれる。幕末という時代の流れを追いたい場合には向かないけれど、これはこれで面白かった。あと解説を刀鍛冶の方が書いているのだがこれもまた一読の価値ありだった。2012/04/12
紫
3
幕末小説連作短編集。全五編収録であります。各エピソードともミステリ的な趣向は凝らされていますが、いずれも物語のための道具立てといった感。著者の狙いは旧時代と新時代が衝突する不安定な世相を、決して時代を動かした主役でも偉人でもない、いわば一般人の目線で描くことではなかったでしょうか。収録作中では表題作が抜群のクオリティ。会津藩の佐川官兵衛と唐人お吉がいっしょになって坂本龍馬暗殺事件の真相を追及するエピソードなどもあり、どうやったらこんな組み合わせが出てくるんだとびっくり。星5つ。2015/10/02
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