出版社内容情報
日常に潜む悪意や無神経を巧みに描く短編集
ふとした瞬間に気づく、他人の嫉妬の恐ろしさや自分の哀しみの深さ──。何気ない悪意や無神経さを30?40代女性の目線で巧みに描く。全8編。直木賞受賞後第一作、文庫化。(解説/穂村 弘)
内容説明
平穏な日常は、他人の何気な言葉ひとつで、ざわつき始める。夫と後輩女性が噂になっていると聞き、妻が駆け込んだ所は?(「マスカット・グリーン」)女同士の飲み会で、あっちこっち脱線しながら話すうち、ふと蘇る切ない記憶(「元気でいてよ、R2‐D2。」)。笑顔の裏の真意、言葉にできない負の感情など、普段は隠している本音が顔を出す瞬間を、女性を主人公に巧みに描く。傑作短編8編を収録。
著者等紹介
北村薫[キタムラカオル]
1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中はミステリ・クラブに所属。高校で教鞭をとるかたわら、89年『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞受賞。93年から執筆に専念。2009年『鷺と雪』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takaichiro
88
まえがきで怖い話を集めた短編集と宣言。それを念頭に読み進める。何か出てきたらどうしようと真っ暗な山道を歩く様に怖々と。真夜中でなくても非日常の山中は、普段とは違う空気に包まれている。怖さとは知覚できないことへのわかりやすい直接的な反応か。さりさりさりと音がして何だ?とそちらに目を向ける。野良猫がこちらを見ている。猫にとっても人間との遭遇は非日常。怯えている。歩くうちに日が明けてくる。少しずつ周りが見えて来る。気持ちが楽になっていることに気が付く。そんな感じの本です^_^2019/06/21
kishikan
76
タイトルに惹かれて購入。表紙が可愛いので、どういう内容かなと思ったら、裏表紙の方の帯に「日常に潜む悪意や本音の怖さを女性視点で描く全8編」とある。北村さんの小説には、結構怖さを感じるものもあるのでそういう類の小説かなと思って読み始めたら、まえがきに「妊娠中の女の方は『腹中の恐怖』を読まないで下さい、とあった。ちょっとだけ、こりゃヤバイな、と思っていたら、やはりね。ホラーのような怖さじゃないけどゾクゾクっとくる。「腹中の・・・」もそうだけど「よいしょ、よいしょ」それにタイトル作も。女性が読んだらなおさら?2013/01/16
tengen
73
日常ミステリーを得意とする北村薫さん。 こちらは日常ホラーといった趣の軽いタッチの怖いお話短編集。 背筋が凍るようなことはないのですが、ドキっとしてしまいます。 まえがきにも書いてありますが、妊婦さんは読まないように。 マスカット・グリーン/腹中の恐怖/微塵隠れのあっこちゃん/三つ、惚れられ/よいしょ、よいしょ/元気でいてよ、R2‐D2。/さりさりさり/ざくろ2014/05/13
masa
69
無知であればあるほど怖いもの知らずでいられるというのは本当で、真の恐怖は理解からもたらされる感情だ。いつだってリアルタイムの物事よりワンテンポ遅延してやってくる。物語の終わり方に、よくわからないが何か不穏なことが起こったのだということを感じ取り、少し遅れて理由に思い至りゾワッとする。きっと、生きている中で意味がわかってしまったら実は怖ろしいことは沢山あって、僕らは無恥を承知で無意識下に無知を発揮して乗り切っているのだろう。ほら鏡を覗いてごらん。本当はあなたが鏡の中にいて、覗かれている側なのかも知れないよ。2021/04/25
まじゅ
55
人の裏を読むのが苦手である。せっかく気付かなかった悪いことは、気付かないままスルーしたい。 些細な事柄に拘って連想ゲームのようにつなげて考え、勝手にストレスを感じる人がいる、それ自体が恐ろしい。 初読みの北村薫がコレで失敗したかも。私には合わないと感じた。 「ざくろ」は面白かった。2013/02/01