出版社内容情報
運命に翻弄される男女を描く不朽の医療小説。
孤独で深い影を引きずり、酒と女に耽溺する直江は、恋人の倫子にとって、捉えきれない男だった。彼の秘密に気づき始めた倫子は、正月休みに旅に誘われ、雪景色の北海道へ旅立つ…。切ない愛の行方を描く。
内容説明
どこか孤高の影を引きずり、ニヒルで不可解な存在。彼と深い関係となった今も、志村倫子にとって、直江は捉えきれない男だった。相変わらず酒と女性に耽溺し、密かに麻薬を打っている気配もある。彼の秘密に気づき始めた倫子は、正月休みに旅に誘われ、二人で雪景色の北海道へと発つ。楽しい旅行になるはずが…。運命に翻弄されつつも生きる男と女。切ない愛の行方は!?医療小説上、不朽の名作。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。70年『光と影』で第63回直木賞受賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で第14回吉川英治文学賞を受賞。97年に刊行された『失楽園』は大きな話題をよんだ。2003年には紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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カーミン
29
1971年頃執筆された医療小説。大学病院のエリートの地位を捨て、個人病院のドクターになった直江。孤高を引きずり、それでいて、群がるオンナたちを拒まず受け入れる。さらに、密かに麻薬を打っているフシもある。看護師の倫子は、それらを知りながらも愛し続け、やがて直江の子を身籠る。自分の死というものに臨もうとする直江。私からすれば、エゴイストにしか思えなかった。2020/08/17
どぶねずみ
23
医者は自分の死期をよく知っているだろうが、自分の命があと3ヶ月で自殺したくなるものだろうか。なぜ、院長だけにでも状況を伝えなかったのだろうか。誰にでも伝えていい内容ではないが、一人で抱え込まなくてもよいと思う。しかし、直江がこれまで優秀であったのは、自分の死期を知っていたから、患者の気持ちをよく理解していたのであろう。だから患者の気持ちがわかるというのも皮肉なことである。
小豆姫
10
う~む。これが、渡辺淳一先生の描く小説世界なのですね。性描写は文学的で美しい。直江医師は優秀な人なのかもしれないけれど、最後の選択が自分勝手過ぎて… 女をなんだと思ってるのでしょう。人間的には惹かれませんでした。2021/05/31
takehiro
8
生きる期間より死ぬ形が大切という直江医師の考えは、確かにそうかもしれないと思った。全力を尽くしたけど助からなかった、という事なら患者もその家族も納得できるのかもしれない気がする。2021/04/25
あの
2
宝塚で舞台化していたものを見てから、読んだのでなんとなくの結末は知っていたけれど、読んで良かったと心から思える本でした。倫子さんのように、どんなことをされても直江先生のことが好きな気持ち、まだそんな恋愛はしたことがないけれど、わかる気がしました。だから、旅行に誘われた場面はすごく嬉しかったです。そこからの下りは、涙無しに読めませんでした( ; _ ; )