出版社内容情報
地底湖に棲む謎の生物“イクティ"を救え!
ダイビングの最中に突然現れた謎の生物は不可思議なコミュニケーションで正人の意識に入り込んできた。果たしてその正体とは。幻想的な描写を得意とする篠田節子の原点となるファンタジー小説。
内容説明
遭難したダイビング仲間を探すため、奥多摩の地底湖に潜った正人は複雑に枝分かれした水中洞窟に迷い込む。命綱は切れて酸素の残りもわずか。死を覚悟した正人を出口へと導いたのは、直接頭に入り込んできた“彼女”だった。体の奥に響く衝撃とともに浮かぶイメージ。あれは一体何だったのか。正体を明らかにしようと再び正人はその地へと向かう―。著者の原点となった傑作ファンタジー小説。
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
1955年、東京都八王子市生まれ。東京学芸大学卒。90年『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞を受賞。96年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞、97年『女たちのジハード』で第117回直木賞、09年『仮想儀礼』で第22回柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で第61回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Take@磨穿鉄靴
65
篠田氏初体験。鍾乳洞、地底湖、不思議な生物、死亡事故、謎、山、林道、山道…。ワクワクするキーワードが散りばめられている。で当然面白い。あえて気になった点はイクティも友人の死も結局ふわっとしたまま終わった事。主人公はラストの暴走より公務員的な受け止め方でその後どう生きるかを描いた方がより響いたと思う。最後に爆破されたのは山とこの物語だと思う。カバーデザインは秀逸。★★★☆☆2019/01/26
takaC
60
神山裕右氏『カタコンベ』やら、鈴木光司『仄暗い水の底から』(に収録の「海に沈む森」)やらを彷彿とさせる息詰まる導入部だったが、そのどちらとも全然違う展開を見せ、予想外の結末へ導かれた。正直言ってちょっと残念な話。2015/05/11
harupon
27
篠田節子さん著書は「逃避行」「静かな黄昏の国」に続いて3冊目。奥多摩の地底湖に潜ったまま戻らない純一の捜索が打ち切られた。正人はひとりで捜索を続け、地底湖の洞窟横穴で全長3m程の大きな洞窟生成物に出会う。トンネル工事・林道開発のせいで地底湖の水が汚染されている。イクティと名付けた生物を死なせたくない一心で真面目な正人がとんでもない強硬手段にでる。自然保護運動の裏側と幻想的なファンタジーの世界。次は篠田節子さんの第117回直木賞受賞作「女たちのジハード」読まねば!!2021/12/22
エドワード
24
教育委員会に務める長谷川正人は、行方不明のダイビング仲間の捜索のため奥多摩の洞窟へ潜り、奇妙な動物と出会う。この動物の住む奥多摩の森がスーパー林道建設のために危機に瀕していることを知った彼は、建設反対運動に参加する。ところが運動の指導者がとんだ曲者で正人は失望する。スーパー林道を一人で破壊しようと猪突猛進する正人の、小心な公務員とワイルドな行動のギャップが不思議。幻覚を誘う動物サイドから、ウルトラQのような展開の仕方も面白いかなと思うけど、市民運動の胡散臭さのリアリティこそ篠田さんの真骨頂と言えるだろう。2016/01/19
hope
23
真っ暗な地底湖。冷たい水の中、上も下もわからない。白い指が泳いでいる。いや、あれは魚だ。─ 地底湖で消息を断ったダイバーの友人を探し、そこで発見した得体のしれない生き物。こいつには知性があるのか? 林道工事で汚染されていく環境から、この生き物を守らなければいけない。胡散臭い市民活動にも手を出し、焦りと怒りの先にあるのは希望か、破滅か。 2022/08/08