内容説明
三十路のひきこもり息子と90歳過ぎの姑と共に、静かに暮らしていた緋田夫婦。ある日突然、破産した長女一家と離婚した次女が戻ってきて、4世代8人の大所帯に!物置に閉じこもる孫、離婚後に妊娠が発覚した次女、戦中の記憶と現在を混同する姑…平穏を愛する当主・龍太郎の思いをよそに、次から次へと騒動が押し寄せる。悩み多き一家の姿を軽妙に、時にシニカルに描く痛快家族小説。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務ののち、フリーライターに。米国滞在を経て、2003年『FUTON』で小説家としてデビューする。2010年『小さいおうち』で直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
560
長女は破産、次女は離婚で次々に実家に帰ってくる。とうとう9人が一つの家に同居することに。みんなそれぞれに葛藤を抱えてはいるのだが、その中にあってご隠居のタケ、ヒッキーの克郎、身重の次女の友恵は、どこか飄々としたもの。ドタバタ喜劇になるのかと思いきや、そうはならない。中島京子の物語るテンポはひじょうによく、しかもこの家族の人たちを見る目が限りなく優しい。大団円で問題がすべて解決したわけではなく、あくまでもそれなりになのだが、そうした結末こそがこの家族には相応しいようだ。2021/01/28
yoshida
273
温かい家族小説。ひきこもりの長男や、破産して実家に戻ってきた長女夫婦と孫。そして、離婚して戻ってきた妊婦の次女。4人で暮らしていた緋田夫婦は、一気に8人の大所帯になる。描きようによっては、いくらでも暗く出来るのだが中島京子さんは、明るく軽妙に大家族の姿を描いてゆく。そして、一度は集まった家族もそれぞれに光明を見出だし、緋田家から再び巣だってゆく。個人的には株のトレーダーをしていた長男の克郎に訪れた幸運が、本当に良かったと感じた。人生に起きる物事を多面的に見れば、絶望にも希望にもなるのだ。素敵な作品です。2016/07/23
おしゃべりメガネ
190
『平成』最後の本日に読了できて、本当に良かったと思えるステキな作品でした。『東京バンドワゴン』シリーズが好きな方にはオススメできる内容かなと。『東京〜』ほど平和?ではないかもしれませんが、タイトルにあるように大家族をテーマにした作品で、笑いあり涙ありと見事なヒューマンモノです。家族それぞれの事情や目線から展開される連作な構成は読みやすく、テンポもよく飽きないですね。話によってはちょっとシリアスなモノもあり、ただ感動するだけでは終わらない内容です。人生色々ありますが、やっぱり健康で平和なのが一番ですね。2019/04/30
冴子
178
中島さんらしい優しい家族物語。元歯科医で都内の一戸建てに住んでいる夫婦の下に諸事情により戻ってきた娘たち家族。自分に諸事情があっても、家族を思いやる気持ちが胸を熱くする。長女の夫も面白い人物だし、引きこもりの長男も心優しい。読み終わってほっこりした。2017/01/02
青葉麒麟
168
当事者にとってはたまったもんじゃないかもしれないけれど、大家族って良いなって思う。一難去ったらまた一難の日々が面白い。タケが主役の『時をかける老婆』が一番ハマった。家族の晩餐のガヤガヤした雰囲気が好き。ちょっと『東京バンドワゴン』に似ている。2013/09/08