内容説明
現代の日本が忘れてしまった武士道の有りよう、永遠に語り継ぎたい日本男児の生きざまがここにある!坂本龍馬、陸奥宗光、西郷隆盛ら、幕末を生きぬいた志士たちの肖像。土方歳三に見込まれた新選組の隊士、天覧のもと兜割りを成し遂げた日の本一の剣豪、西南戦争を闘う薩摩軍兵士ら、維新の動乱を駈けぬけた剣客たちの肖像を描き上げた逸品ばかりを収録。歴史小説の大家が自ら厳選した力作短篇集。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
1929年3月23日和歌山市生まれ。東北大学法学部卒業。78年『深重の海』で第79回直木賞を受賞。95年『夢のまた夢』で第29回吉川英治文学賞を受賞。97年紫綬褒章、2003年旭日小綬章を受章。05年菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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剛腕伝説
20
幕末の志士達の肖像を画いた短編集。津本陽の剣戟シーンはリアルで迫力がある。特に薩摩示現流の剣技は、守りも居合もなく、渾身の力で切るのみ。顔面を横に払い両断する。脛を払い足を切断する。肩口から心臓にかけて切り下げる等々、血臭がしてくる。幕末の志士の内面に迫る他の読み物も興味深い。西郷隆盛の高潔さ、坂本龍馬の強かさ、「嘘つき小次郎」と呼ばれた陸奥宗光の、狡猾さ等々。剣豪榊原健吉の一途に武士道を貫き通した「明治兜割り」が心に残る。文明開化の時代の最後の古武士であった。 2021/02/11
C-biscuit
16
図書館で借りる。先日刀の本を読んだが、その中で「明治兜割り」の話がでていた。胴田貫での斬鉄の話である。これが読みたくて借りたが、この小説は短編が8つあり、どれも面白い。九州の胴田貫は、別の話の示現流でも使われており、かなり印象に残る。また、坂本龍馬や西郷隆盛などの話もあり、登場人物が有名なのも読みやすかった。本命の兜割りであるが、他の二人が失敗する中、榊原鍵吉のみが成功する。しかも天皇展覧の中であることを思うと、プレッシャーに打ち勝つ内なる強さも気になるところである。ここが武士道の極まるところなのだろう。2016/07/29
koushi
7
「明治撃剣会」幕末維新の主役であったにも関わらず維新の恩恵に与ることのなかった武士の意地と哀しさを感じた。剣技の描写は、剣道、抜刀道の有段者でもある津本氏ならではと言える重厚かつ簡潔な筆致で、撃剣の情景は目に浮かぶようで迫力があった。2014/01/26
伊瀬有佐
6
鹿児島弁に思った以上に苦戦。『祇園石段下の決闘』が良かった。幕末時代の人たちにとって、刀っていうのは本当に命だったんだな……。2018/01/27
鵺
4
幕末、明治初頭の偉人、剣士の短編集。明治になって廃刀令になっても侍の誇りを捨てない明治兜割の短編が一番良かった。 2019/04/16