内容説明
小早川正人。大手出版社に勤務し、年収は1000万円以上。二人の娘は有名お嬢様学校に通い、可憐な妻は素敵な我が家でレースを編む。一見幸せな結婚生活だが、実態は多額のローンに追われ、仕事に追われ、妻のリクエストに追われ、散歩すらままならず―。みんなに祝福されてゴールインしたはずなのに、どこで間違ってしまったのだろう?シニカルで斬新な結婚論が炸裂する、強烈な夫婦小説。
著者等紹介
姫野カオルコ[ヒメノカオルコ]
1958年滋賀県甲賀生まれ。90年スラップスティック・コメディ『ひと呼んでミツコ』で単行本デビュー。『受難』『ツ、イ、ラ、ク』『ハルカ・エイティ』で直木賞候補(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
345
かつて女性たちが望む結婚相手の条件として「三高」という言葉があった。すなわち高学歴、高収入、高身長である。主人公の正人は高学歴(仮名だが、モデルは早稲田)、高収入(大手出版社の社員で30代にして年収1600万)、最後の高身長だけは及ばないのだが、ほぼ理想の条件を満たしている。その上に浮気はしないし、妻にも頭が上がらない。一方、妻の雪穂は幼稚園から短大まで一貫してカトリックのお嬢様学校の出。そして、彼女は「勝ち組」である。しかし、彼女もまた幸福ではない。畢竟、結婚を人生の墓場にするか否かは愛にかかっている。2018/06/28
ミカママ
231
なんとも後味の悪い作品だわね。日本のパパは大変だ┐(´д`)┌2017/05/13
utinopoti27
170
年収一千万超の大手出版社に勤める小早川は、自称「成蹊のお嬢様」とできちゃった婚をしてしまう。天然なうえにぶっ飛んだ三段論法の使い手に翻弄される彼は、気が付けば自由と金を奪われ、あわれ給料配達人となり果てるのであった。本作は夫婦小説を標榜しているが、人間社会における♂と♀の生存競争の原理を分析した「学術書」なのだ。一見ユーモラスな文章にコーティングされたヘヴィな論陣は、軽い気持ちで手に取ってしまった読者に、胸やけと胃もたれを確実にもたらすことだろう。悪くはない、悪くはないが、できれば深入りは避けたいものだ。2020/09/09
いたろう
67
これは、ある意味、イヤミスなのかも。「結婚は人生の墓場」とは、結婚すると、もう自由に女性と遊べなくなるからという男性の勝手な言い分なのかと思いきや・・・。お嬢様学校出の妻と2人の娘との生活、それは、はたから見ると幸せそうに見えて、理想の教育、理想の住まい、娘たちの教育費と妻が次々と決める新居にどれだけお金がかかるのか。一般的な「悪妻」とは違うが、自分が正しいと思って疑いもしない無垢なる迷いのなさが逆に恐ろしい。生涯未婚率の上昇が問題になっている昨今、これを読んで結婚をためらう男性が増えなければいいけれど。2019/04/13
ワニニ
56
題名見て、夫がギョッとしている。いやいや妻の話じゃなくて、夫の方の話だってば。小早川は気の毒すぎるけれど(かなり面白いが)、安住しちゃっている感がイラつく。雪穂には雪穂なりの怪論理があり、デフォルメされてはいるが、こういう人いるいる。結局、墓場になるか否かは二人次第。小早川ラストの行動に「よしっ!」哀愁漂わせているだけじゃ、男はダメだよ。なに、もしかしてわが夫もこんなふうに考えているかも…とだんだん反省したりしている自分に気づく恐怖小説(笑)。雪穂さんも読んでみて下さい。冴え渡る姫野さんのシニカル分析!2015/05/19