内容説明
1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた。彼が想いを寄せていた女性、同じツアーに参加した会社員、添乗員…青年を取り巻く人々の記憶は、肝心なところが欠落していた。15年後、彼の行方を追う駆け出しライターは、当時ひそかに流行していた「迷子つきツアー」という奇妙な旅に行き着くが―。記憶のいたずらが、一人の人間の運命を変える。現実と虚構の境が揺らぐ、ミステリアスな物語。
著者等紹介
中島京子[ナカジマキョウコ]
1964年東京都生まれ。東京女子大学文理学部史学科卒業。出版社勤務ののち、フリーライターに。米国滞在を経て、2003年『FUTON』で小説家としてデビューする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
399
中島京子は9冊目だが、これは今までに読んだものとは幾分異質である。いささかシュールっぽい趣きなのだ。エピソード1を基軸として、以下のエピソード2~4はいわばその変奏曲である。ただ、最初のエピソード1の「迷子つきツアー」が篇中で最も文学的な香りが高く、2以下を語るにつれ通俗性が増していくように思われる。興味深い構成をとっているだけに、その点は残念である。一方、物語の「時」として選ばれた1989年は、確かに大きな転換点であったかもしれないと思う。それを巧みに捉えるあたりは中島の作家的センスかと思う。2021/03/08
オリックスバファローズ
73
手の込んだ長編小説だった。2018/11/27
いたろう
64
1989年と言えば平成元年。平成の最後に読む、平成元年の「ツアー」の話。このツアーとは、ツアー客の一人が途中でいなくなってしまうという「迷子つきツアー」(!)。1989年に香港でいなくなったツアー客から、十数年を経て届いた手紙。日記、ネットに書かれた、このツアーの話。ツアー中に行方不明になったという人は、本当に実在する人物なのか? そしてどこに消えたのか? 徐々に謎が明らかになるように見せて、ますます広がる混迷、めくるめく迷宮の世界。ところで、ウルトラマンが中国で吉田超人と呼ばれていることを初めて知った。2019/04/27
shizuka
60
なかなかミステリアスで面白かった。「迷子ツアー」を巡る人間関係とその背後。だんだん真相が明らかになっていく過程、充分に楽しめた。バブル全盛期、たしかに何が合ってもおかしくなかったんだろうなあ。あの時代を生きた人たちの話を聞くとほんと面白いし。これが日本なの?って思う。そんな時代に一風変わった旅行をとのことで企画された「迷子ツアー」、最終日一緒にいた参加者が消える。他のツアー客の心には不思議な思い出が残る。それが売り。舞台は香港、文字を追ってるだけでも雑多。パワフル。魑魅魍魎。迷子になったら最後、消される。2017/05/21
はな
42
不思議なお話でした。読み出すとページ読む手が止まらなくて…惹きつけられる本でした。2017/05/20