内容説明
心形刀流・伊庭道場の後つぎ伊庭八郎。ある理由から剣ひとすじに生きると決め、精進を重ねてきた腕は、不羈の才と評判をとっていた。動乱騒擾の絶え間ない幕末を迎え、八郎は将軍上洛に伴って京へ。幕府の崩壊を目の当たりにし、江戸っ子侍気質そのまま、同士を募って遊撃隊を組織し、怒涛の進撃を続ける官軍に挑む。武士の矜恃を胸に、短く壮烈に生きた美剣士の意気地を雄渾に描く青春幕末秘伝。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ともくん
58
幕末の騒乱のなかに青春を送り、27歳で散った伊庭八郎。 賊徒になっても幕府を、いや、徳川家を守る。 その志だけで27年という、太く短い人生を送ってきた。 現代の我々には、到底、かんがえららることではない。 懸命に駆け抜けた人生が悔いのない一生であったと信じたい。2018/11/24
ドナルド@灯れ松明の火
33
池波さん初期作品とは思えないほどの完成度。伊庭八郎の一生が描かれ完全に引き込まれた。まさに幕末の幕臣たちの想い・薩長の尊王攘夷の底の浅さ、江戸から明治へと変わる際の町民たちの感覚が生々しく、感情を揺さぶられる素晴らしい傑作であり名作である。超お薦め！2017/04/19
elsa
24
歯切れのよい文章で味があります。江戸弁が心地よく耳に響き、大好きな一冊になりました。私が死んだら一緒に焼いてほしいくらい。伊庭さん、鎌吉、小稲ら数々の魅力的な登場人物たち。それぞれに信念、生き方、美徳がある。 「人は…ことに女は、その一生で、どのような人と出会い、どのような人とのつながりをもったかが、女のいのちになるもの…女は、その思いで一つで、生きられもし、よろこんで死ねもする…」。たーくさんの男を知ってる小稲に、ここまで言わせる伊庭さんはやっぱりすごい。2020/05/10
誰かのプリン
20
箱館に散った伊庭八郎。人に言えない秘密を秘めての27年、さぞかし辛く悲しい人生だったのだろう。いや 義父の軍平、鎌吉、花魁の小稲の優しさに触れたのだからきっと幸せだったのに違いない。2018/09/23
りか
19
何故か新選組の本だと勘違いして買った本。隻腕の剣士・伊庭八郎のことを描いた作品は初めて読んだ。今まで読んだ沖田総司の小説とよく似てるなあ、と思った。恨みを買って執念深く付きまとわれる、という設定はよくある感じだなあと思いつつ、できれば伊庭八郎に決着をつけてほしかったなあ、とも思ったり。でもすべてを達観した雰囲気の伊庭八郎、男前すぎて素敵。2014/02/06
