内容説明
かつては「おとぼけ同心」と呼ばれた、元北町奉行所定町廻り同心・小山田采女。退隠後は、娘のように若いおしゅんと暮らしている。穏やかな日々を送る二のもとには、さまざまな相談事、難題、そして事件が持ち込まれてくる…。江戸下町の移りゆく季節の中、市井の人々の哀歓とともに采女の人情あふれるはからいを描く長編時代小説。
著者等紹介
花家圭太郎[ハナヤケイタロウ]
1946年秋田県生まれ。明治大学文学部仏文科卒業。フリーライターとして活躍後、ユニークなキャラクター戸沢小十郎を造り、98年『暴れ影法師』で時代小説作家としてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぶんぶん
18
【図書館】初めての作家さん、図書館で何気なく手に取ったが、スゴク良い、独特の雰囲気が好きだなあ。 訳あって早めに隠居した同心と親子ほど歳が違う妻女の物語。 それを取り巻く人たちとの交流と歴史を描く人生模様。 地域と自然の四季それぞれ(まだ、早春から初夏まてだが)の描写が素晴らしい。 ゆったりと流れる風物詩と事件に関わる瞬発さの緩急の差が見事にマッチしている。 訳ありはまだまだ全部解決していない、ゆるゆると見て行こう。 と思ったら、作者は現在亡くなっているとの情報が。 2巻目も有るので先ずは2巻へ。2021/11/13
あかんべ
10
なになに春秋と付くと現役を引退した同心が、息子と力を合わせて事件を解決って具合になるのか?こういうパターン読んだことがあり、新鮮さに欠けている。主人公はもう少し身もふたもない人物が好ましい。2015/03/07
yonemy
5
読み始めは謎に思える事を、そこに至る秘密を明かしながら今が語られる。事情が腑に落ちるから、自然と人物それぞれへ情が染みていく。自分の心の動きを手に取るように理解できた、珍しい一冊でした☆また「とろとろ」「とろり」など独特な擬態語で、年の離れた夫婦の、ゆったりした暮らしぶりが感じられる。しかし、事件はなかなかに世知辛い。「同心のしごとは罪人をつくらぬこと」が心に残る。2020/06/20
水戸
5
書き出しから、粋な文章だなぁ。話の流れで、ふと差し込まれる過去の出来事も、目の前にある時間の裏側も、どれもこれも、重たく暗く残酷なものであるのに、さらりと流す文調から、日常の中には当たり前のように隠れている出来事みたいな感じがする。なぜ、そうするのかなど、若者に語り教える形で描かれているので、くどくなくさらっと、最後まで読み進められます。というか、途中で区切るのが難しいというか、流れに乗って最後まで気負いもせずに連れて行かれる感じ。2019/12/08
りゅう
3
定町廻り同心達の心意気、良いですね。人情溢れた話しで、気持ち良く読むことが出来た。2012/10/09