内容説明
金貨や銀貨を、町民の間で使われる文銭に両替する銭売り。深川でまっとうに商売をする賽蔵たちに対抗して、亀戸にあらたに銭座が開かれることになった。権力を盾にあらゆる手を使い、深川に食い込もうとする亀戸…。真摯に得意先に向き合う賽蔵、そしてその気概に応える大店の主人や仲間たち。商売とは、人と人のつながりとは、思いやりの心とは…、しみじみと現代人に問いかける時代長編。
著者等紹介
山本一力[ヤマモトイチリキ]
1948年、高知県生まれ。都立世田谷工業高等学校卒業。さまざまな職業を経て、97年『蒼龍』で第77回オール讀物新人賞、02年『あかね空』で第126回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ともくん
61
銭を売るという、江戸時代特有の職業。 男気、人情味に溢れ、誰からも慕われる賽蔵。 山本一力の筆によって、魅力的な人物に仕上がっている。 江戸深川の街並みが、まるで目の前に広がっているかのように臨場感溢れる文章。 山本一力の筆力に脱帽してしまった。2018/11/12
アルピニア
50
舞台は江戸時代中期の明和。五匁銀の発行と鉄銭の生産にまつわる物語。人々の生活の様子、いろいろな商い、商人のヒエラルキー、通貨のしくみ、等々興味深かった。賽蔵は、一介の銭売りだが、「真っ当な暮らしをしている人々の役に立ちたい」という志を持っている。自分達の損得だけを考えて買い渋り、売り惜しみをする両替商や金座に知恵で立ち向かう。彼の気概に心を動かされる人がだんだん集まり・・。「徳は孤ならず、必ず隣あり」という言葉を思い出した。賽蔵や英伍郎、次郎右衛門の矜持、何より深川庶民の人情が心に沁みて温かい読後感。2023/11/15
酔拳2
25
いや面白いわ。山本一力先生って、江戸の様々な職業を描くのが得意だそうですが、本書は銭売りと言う、今では馴染みのない職業。要は両替商なんだけど、でかい金を日常に使う小銭に両替して、手数料を頂く商売です。出だしは冴えない感じの主人公賽蔵ですが、話が進むにつれ大物感が出てくる。江戸版半沢直樹っつってもいいんじゃない?相方のおけいが要所要所で賽蔵を助けるのがいかす。話は貨幣改鋳の鉄銭をどう市井に浸透させるか、という難問に立ち向かった男、と言う感じかな。敵が味方になっていく成り行きはワクワクします。ビバ深川!2023/11/08
きょちょ
24
彼の作品は2作目だが、どうやらヒューマニズム、義理人情、侠気などを描くのが持ち味なのだろう。 従って、安心して読める。 言ってみれば、高倉健の侠客映画の、時代小説バージョン。 金・銀・銭(文)の流通や、なぜ両替商や銭売りが成り立つのか、ほかにも江戸時代の風俗がいろいろ描かれていて、それは勉強になった。 スカッとしたいときに彼の作品を読もう。 ★★★2019/07/31
はかり
14
山本一力は何冊か読んでいる。いつも解説がましい気がしてじっくり読めない。賽蔵は孤児だけに人情に篤い漢。深川を舞台に銭を売る。筋を通して欲を出さない。それが支持を集め、共感を呼ぶ。2020/09/07
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