内容説明
梁山泊の頭領の対立が深刻化していた。兵力をもっと蓄えたい宋江。今すぐ攻勢に転じるべきだと主張する晁蓋。しかし、青蓮寺は密かに暗殺の魔手を伸ばしていた。刺客の史文恭は、梁山泊軍にひとり潜入し、静かにその機を待ち続ける。滾る血を抑えきれない晁蓋は、自ら本隊を率いて、双頭山に進攻してきた官軍を一蹴し、さらに平原の城郭を落とした。北方水滸、危急の十一巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年唐津生まれ。中央大学法学部卒。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞を、85年『渇きの街』で日本推理作家協会賞長編部門を、91年『破軍の星』で柴田錬三郎賞を受賞する。また、2004年『楊家将』で吉川英治文学賞、06年『水滸伝』(全19巻)で司馬遼太郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
287
大きな戦が終わり、次の山場を迎えるまでの梁山泊内部の掘り下げに重きが置かれている。再登場の索超、己と向き合う樊瑞や杜興等、どの逸話も面白い。しかし、この巻はそれだけに留まらず、梁山泊を揺るがす一大事が起こる、物語にとって非常に重要な位置を占めたものとなっている。前巻が華々しい戦の活写がメインであったのに対して、様々な人物が内向的に死に向き合う様子が繰り返し描かれ、結果、陰りの多い落ち着いたトーンで統一されている。胸熱というよりは、じわじわとゆっくり、心の深いところまで染み入ってくる、静かな感動のある一冊。2021/12/07
しんごろ
206
攻めるか!待つか!この論議でもめても、外に出ていても、中に残っていても頭領二人の心は奥で繋がっている。「おまえの顔が見たくなった。」このメッセージが全て!もう会えなくても、彼らは無二の友であることは間違いないなかった。樊瑞の覚醒、杜興の意外な才能が輝きつつ、今回は梁山泊、官軍が整備しつつも静かに戦い、情報戦がおこなわれた感が…。嵐の前の静けさか…。青蓮寺も静かすぎて、次巻が気になります!2017/09/21
ehirano1
141
公孫勝「何もわからんということが、わかるだけかもしれんが」、樊端「じゃ、無駄だ」、公孫勝「その代わり、別のものがわかるさ」。この一連の会話がとっても印象に残りました。こういうのなんか好きです。2020/01/03
ehirano1
80
「人はたやすく死ぬし、(一方で)なかなか死なない⇒死んでもおかしくない者が生き、死ぬはずのない者が死ぬ⇒(つまり)死ぬ時が決まっているからではないか(つ、推測される)⇒(故に)その時が来るまで死にたくても死ねない。時が来てしまえば死にたくなくても死ぬ(はず)⇒(しかたがって)それぞれの人間がその時を持っている(のではないか)」。この理論構築がなかなか興味深いです。因みに()は当方が加筆しましたwww。2021/01/11
ehirano1
75
樊端「考えてもわからないということが、わかりましたよ」、公孫勝「生死の分かれ目というものは?」、樊端「だから、運命というような言葉を人は作ったのでしょう・・・凌ぎきることもたまにはできる。自分の力であったり、他人の助けであったり。しかし、いつかその時は来る。私はただ、それだけがわかたっと思います」。樊端、凄いなと思いました。本書はホントに死生観全開です。2022/11/28