内容説明
これ以上痩せられないほど痩せ、傷つけられ死んでいった幼児。母親に愛情を注がれず放置され、無反応、無感動になってしまった赤ちゃん。幼い頃の虐待が心の傷となり非行に走る少女…。子ども虐待は後を絶たず、悲劇が繰り返されている。個人に、社会に、できることは何か?虐待の実態を鋭く描くとともに、対策の現状と課題、未来への希望をみつめたノンフィクション(漫画『新凍りついた瞳』原作)。
目次
第1章 「SOS、SOS、助けて…」
第2章 サウナの家
第3章 長い家路
第4章 母子治療
第5章 子どもたちの未来へ―法医学者たちの熱き闘い
第6章 『児童虐待の防止等に関する法律』の見直しをめぐって
著者等紹介
椎名篤子[シイナアツコ]
1955年生まれ。駒澤大学卒業。フリー・ジャーナリスト。日本子ども虐待防止学会副会長、児童虐待防止全国ネットワーク企画委員。子ども虐待の存在を著書やその漫画化作品で顕在化させ、児童虐待防止法の立法にも尽力(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamakujira
1
子供の虐待に関するルポ。むごい虐待の事例、児童養護施設の問題と限界、自立支援ホームの現状と使命感、母子治療、虐待の発見と監視のシステムなど、児童虐待の現実と課題を多角的に掘り下げる。虐待死のニュースを見聞するたびに胸を痛め「殺すくらいなら捨てろ」と思うものの、子供に対するいびつな執着が殺すまで虐待を続けると知るとやるせない。どんな親のもとに生まれるかって「人間は生まれながらに不平等」の典型だね。人員配置を含めた対策強化が急務なのに、いまだに虐待死が絶えないのは悲しいね。 (★★★☆☆)2014/12/04
モカ
0
児童虐待のニュースを見聞きする度に疑問に思う事がある。虐待するくらいなら施設から引き取らなければ良いだろう、素直に施設に預ければ良いだろうにと思うのだ。この関連の書を読むと親も辛かったんだろうと思う事もあるが、第一章の京子ちゃんの両親には同情の余地もないどころか、父が「もっと強く言われていたら子供を預けていたかもしれない」というような事を言っていた。ふざけるのもいい加減にしろ。母もせっかくシェルターに保護されたのに自ら居所を教えている。愚か過ぎる。戻りたきゃ自分一人で戻れ。2014/05/29
中本 雄大
0
時間をかけて丁寧に書き上げられたルポルタージュ。そこには脚色もなく、淡々と現実が書かれている。子ども虐待を受けたことによる死亡事例、入院事例、保護事例など現実だとは思いたくない記録もある。 だが、そこには確かな光がある。 子ども虐待の防止のために奔走する弁護士、児童福祉司、児童精神科医、法医学者、乳児院、児童養護施設、自立援助ホームなどが描かれている。本当に真摯な姿である。 そして、何よりも必死にSOSをだし、なんとか生きようとする子どもたちの姿に心打たれる。 彼らの姿が私を突き動かす。2011/05/05
ノト
0
40週間もの間自分の体内で育てた我が子を自ら傷つける母親がいることは生理的に信じられない。虐待する親への強い拒絶感と、被虐待児童の哀れさに涙が止まらなかった。虐待する側の追いつめられた理由、手段として簡単に暴力に訴える背景、そして自我が芽生える頃の子どもに虐待体験が落とす闇、社会的な努力などが、やや客観的に理解できた。でも全ての子どもは愛されるために産まれてくるのに。読み終えた時、今すぐ我が子を抱きしめたいと思った。その瞬間にもどこかに凍りついた瞳をしてうずくまる子どもがいることを忘れてはいけない。2011/11/10