内容説明
恒例の「一人避暑」に行く父親と犬のミロにくっついて、五年ぶりに北軽井沢の山荘で過ごす小説家志望の「僕」。東京に残った妻には、他に好きな男がいる。危ういのは父親の三度目の結婚も同じらしい。―かび臭い布団で眠り、炊事に疲れてコンビニを目指す、アンチスローな夏の終わりの山の日々。ゆるゆると流れ出す、「思い」を端正に描く傑作小説。翌年の山荘行きを綴る『ジャージの三人』収録。
著者等紹介
長嶋有[ナガシマユウ]
小説家。1972年埼玉県生まれ。北海道育ち。2001年『サイドカーに犬』で第92回文學界新人賞受賞。同年、『猛スピードで母は』で第126回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜長月🌙@5/19文学フリマQ38
78
「ジャージの二人」と「ジャージの三人」の2編が入っています。「ジャージの三人」の方がおもしろかったのですが「ジャージの二人」があってこその作品です。主人公と妻の関係はとても微妙です。上司と不倫をしている妻。責められるべきは妻のはずでなぜか許してあげたくなります。全然、深刻でなくゆるゆるモードの物語のせいでしょうか。心がゆったりする作品でした。2020/04/26
あつひめ
76
逃げるでもなく、立ち向かうでもなく。ちょっと疲れたなぁ…みたいなゆるゆるした男二人。かといって全てがマイナス思考なわけじゃない…と思いたい(笑)人の心の中を覗いたような気分になるのは、飾らない心がそこにあるからかもしれない。本音がそこにあるってことかな。日常とかけ離れた場所にいるから素直になれたのかも…ジャージを着た親子が。そして、翌年の妻も。2016/01/29
財布にジャック
71
小説とは、誇張して書かれたり、面白おかしく演出がなされているものだとばかり思い込んでいましたが、なんだかこの本は最初から最後まで自然体なので、かえって新鮮でした。ともすれば深刻になりそうな問題が垣間見えますが、なんとものらりくらりとしていて、そんなもんかなぁとか、どうでもいいかなぁとか思えてきて、ゆったりとした気持ちで読めます。しいて感想を述べるとしたら「ふ~ん」という一言です。2012/06/16
エンブレムT
65
長嶋有さん初読みです。なんかこう(この口癖、うつりますねw)「ゆるい」としか言いようが・・・(笑)・・・山荘での日常が淡々と描かれているので、誰かの日記を読んでるような気分になりました。良く言えば登場人物達の存在がリアル。悪く言えば果てしなく退屈。堺雅人さん主演で映像化されてると聞いて興味を持ったのですが、この『何も起こらない』状態をどんな風に?・・・と、逆に映画の方にめっちゃ興味が湧きました(笑)2011/05/24
hit4papa
62
ネガティブさをまったり感に転換する心地良さが、長嶋さんの作品にはあります。ぐだぐだゆるゆるな親子二人を象徴するのが、小学校から貰い受けたジャージです。サイズLLのダサぽんジャージは、まったりユニホームなのです。