内容説明
とるにたらないけれど、欠かせないもの。気になるもの。愛おしいもの。忘れられないもの―。輪ゴム、レモンしぼり器、お風呂、子守歌、フレンチトースト、大笑い…etc.。そんな有形無形の身のまわりのもの60について、やわらかく、簡潔な言葉でつづられている。行間にひそむ想い、記憶。漂うユーモア。著者の日常と深層がほのみえる、たのしく、味わい深いエッセイ集。
目次
緑いろの信号
輪ゴム
レモンしぼり器
煙草
小さな鞄
愛称
焼き鳥
メンソレータムとオロナイン
カクテルの名前
トライアングル〔ほか〕
著者等紹介
江國香織[エクニカオリ]
1964年、東京生。小説、童話、詩、エッセイ、翻訳など、幅広い分野で活躍。『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で第十五回山本周五郎賞、『号泣する準備はできていた』で第百三十回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
97
江國さんのショートエッセイです。とるにたらないけれどかけがえのないものについて思うことをやわらかい言葉でつづられていました。好きなものだけでなく、嫌いなものも中にはあるけれど、江國さんは色々なものを江國さんの色彩で見ているんだと感じました。個人的な趣味が出ているのも面白いです。何気ないものも愛おしく見えます。自分の身の回りのものを自分はどう思って見ているのか、ちょっと考えさせられました。2015/11/25
卵焼き
90
図書館本。江國さんの本は、はじめてです。レモンの絞り器などの作者のエピソードが書いていて、とても面白かったです。2021/12/02
セウテス
88
何かにつけて良く読む作家さんなので、本作も既にボロボロ、新しいのが欲しい。「食前酒と食後酒」などは、私が経験したそのままではないか。「フレンチトースト」で、私も社会人成り立ての時の恋愛を思い出す。アメリカに居るとき、やはりフレンチトーストにベーコンがついてきて、私は今でもベーコンが苦手だ。「推理小説」も、謎解きへの取り組み方は違うのだが、私も自分が望まない出来事に接しない様に、逃避していると感じている。この人の作品を読むと、あの時心が動いた遠い記憶が思い出され、何とも気持ちが良い。よって、また読むだろう。2018/11/24
エドワード
88
私は無役なものが大好きな性分である。音楽やら美術やら、映画やら博物館やらが大好き。オマケも大好きで妻に嫌がられている。世の中が平和につつがなく保たれていくには、無役なもの<とるにたらないもの>が大事だ思いませんか?そんな私には江國香織さんは長年の同志に思える。きれいなケーキも、駅舎も、結婚式もとるにたらないもの。食後酒で余韻を楽しむ。何と素敵な言葉。私の勤める音楽ホールには余韻を楽しむ回廊があるのだが、これが無駄だという人がいるんだよ。だが「余韻を味わう機能がある」という説明も違うんだな。世の中は難しい。2014/06/23
アセロラ@道東民
80
良い意味で“とるにたらないものもの”の事が心地よい文章で綴られているので、寝る前に何編か読んでみるのも良いかもしれない。あるいは、カフェかどこかで行われるちょっとお洒落な朗読会でも。強めの食前酒や素敵な名前のカクテル、煙草を嗜む大人の女の部分と、ケーキやエバミルクが好きだという少女の部分がこれ以上無いほどの素敵なバランスでできている気がする。特に、ケーキについては、とっても共感。本当に“幸福のかたまり”って感じの言葉だよね、ケーキって。2016/01/27