出版社内容情報
開高 健[カイコウタケシ]
著・文・その他
内容説明
少年時代と青春時代はいつもとめどない宿酔であった―。太平洋戦争中の暗く切ない、そして戦後の活力みなぎる時代に私の青春があった。中学一年で父を亡くし、戦後はさまざまな職業に就きながら人生への希望や不安を抱えて過ごしていた。自らの過去を見つめ、魂の彷徨や青春に宿るさまざまな陰影を鮮やかに描いた傑作。今なお根強い人気を誇る開高健。文壇での立ち位置を決定づけた自伝的小説。
著者等紹介
開高健[カイコウタケシ]
1930年、大阪生まれ。寿屋宣伝部で洋酒広告に一時代を画した。57年「裸の王様」で第38回芥川賞受賞。68年『輝ける闇』で第22回毎日出版文化賞を受賞。79年『玉、砕ける』で第6回川端康成文学賞を受賞。81年、一連のルポルタージュ文学により第29回菊池寛賞を受賞。87年『耳の物語』で第19回日本文学賞を受賞。89年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
DEE
14
敗戦間近の少年時代、戦後の高校時代、文章を書き始め、後の夫人と出会い結婚、一人娘が誕生するまでの自伝。 仕事にせよ学問にせよ確固とした何かに依ることができず、戦争に全て奪われ、焦燥と絶望に苛まれながら自身に向かって「なんとかなる」と呟き続ける。 開高健をもってすらこの苦しみか… その明るいものを見失った心境は、程度の差こそあれ誰もが一度くらいは経験するのかもしれない。 本人がとめどない宿酔と表した期間の諦観と熱情がドロドロに溶け合った作品。他では語られなかったエピソードも満載で楽しめた。2019/12/15
tsukamg
6
自伝的小説。戦前の中学時代から、戦後大学生の時に女を妊娠させ子供が生まれるまで。この女・牧羊子夫人のところが、すこぶる面白かった。『夏の闇』に出てくる女と比べると、タフでしたたかで明るい。この章にかかわらず男は常に滅形を感じているのだから、ことさら女に騙された、なんていうふうには読めない。これで良かったんじゃないか? と思うし、実人生においても結果論からいうとそうだったのではないか。2022/03/19
ウテオンマ
4
開高さんの晩年の軽いエッセイが大好きですが、あ、このくだりは・・と既視感たっぷりの自伝的小説でした。これ、映像化してほしい。それにしても、女性についてもその森羅万象語り尽くした開高センセでしたが、意外にも初めての女性と結婚されたんですね。骨と皮で目だけがぎょろりとした少年なんていう若き日の描写があり、昔の写真を見てみたら、確かに目がクリっと。サントリーオールド舐めてるCMの姿は肉で押しつぶれてたのか。あー、でも生まれ変わったら開高センセの愛人になりたい夢はさらに確実なものになりました。2019/07/19
niki
3
あぁ面白かったなぁ。 開高健が自身の若い頃についてこんなにも正直に書いてくれたことに感動。彼の十代は私の中で謎だったのだ。 少年時代の戦時中の描写は臨場感たっぷり。気持ち悪くなって読み飛ばした箇所もある。 そして逞しい女に主導権を握られ若くしてあっさりと父親になってしまうのが呆気ない。彼は子どもなど全く欲しくないのだ。この虚しさ。私までがっかりしてしまう。 開高健が父親にならず自由に二十代を生きられていたらどんな大人になっただろうと想像してしまう。女は怖い。2022/11/24
芋煮うどん
3
戦争体験は、凄まじい原動力なのだ、と改めて感じた次第。2019/11/25