出版社内容情報
八木澤 高明[ヤギサワ タカアキ]
著・文・その他
内容説明
かつて存在した非合法売春地帯「青線」。多くは江戸や明治時代の遊郭から派生したもので、お上の目を欺くため料理屋やバーを装っていた。故に場所も数もはっきりとしていない。色街は人間の欲望だけでなく、政治・経済と密接に結びつき、間違いなく日本の歴史の一部だ。その残り香を求め、10年以上かけて取材した著者が、日本の裏面史を炙り出す―。これぞJAPANアンダーグラウンドの全貌!
目次
大都会の日陰 谷底から見える東京の歩み―東京
パンパンの街へと変貌した農村地帯―山形県神町
女は罪と業を背負い十五年の逃亡を続けた―福田和子と今治
水運と売春 さびれた生業と島の過去―渡鹿野島・京都
日本文化の根っこにある被差別と売春―大阪
江戸から明治へ 消えゆく娼窟文化と生きた女―阿部定と江戸~東京
タイスナックと飯盛女―佐久・木崎・新潟
時代に溶けゆく北の性産業―札幌・函館
青線の忘れ形見を老婆に見た―北九州
戦後の原風景を感じる南国の色街―沖縄
売春シルクロードが伝える産業と女の近代史―埼玉・群馬・横浜
著者等紹介
八木澤高明[ヤギサワタカアキ]
1972年神奈川県生まれ。ノンフィクション作家。写真週刊誌カメラマンを経てフリーランス。2012年『マオキッズ毛沢東のこどもたちを巡る』で第19回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatayan
57
かつて非合法で売春が行われていた全国の「青線」をたどるルポ。飯盛女と呼ばれる私娼の面影を残す旧中山道沿いの宿場町、『売春島』で有名になった三重県の渡鹿野島、高倉健の故郷でもある北九州、米軍と一蓮托生の関係にある沖縄など、記憶の底に埋もれゆく色街を時には体当たりで取材。飛田新地や釜ヶ崎のような色街やスラムが生まれたのは行政の都合によるもので、遊郭と被差別部落は隣接することが多かったことを『日本の路地を旅する』の上原善広を引いて言及。もうひとつの側面から都市の成り立ちを解説する読み物としても興味深いです。2020/07/26
つちのこ
30
飛田新地、渡鹿野島、沖縄吉原など全国に散らばる代表的な青線地帯を取り上げており、その成立と繁栄の歴史を詳しく調査し、娼婦へのインタビューや体を張った突撃的なルポなど、消え去りゆく風俗の今を伝えた労作。また、阿部定や福田和子、大久保清といった犯罪者たちの生い立ちと生涯を、青線の因果関係と絡めていく視点も本書の肉付けとして厚みを増している。風俗満載の薄っぺらなルポと思い興味本位で手に取ったが、さにあらず。現代日本の縮図ともいえる売春の記憶を、真摯に、するどく切り取る内容に、良い意味で期待を裏切ってくれた。2022/12/24
sashi_mono
13
分量以上に読み応えがあった。青線や色街の変遷を丁寧に書き起こしているところが非常によかった。失われゆくものへ向ける作者の温かな視線が印象的。違うテーマの本も書いてほしいぞ。2019/11/07
しんこい
13
青線ってなんだっけから始まる、ソープ街に転じた赤線と違い、多くは飲食街から滅亡へといたるのが違いか。そんな中しぶとく続く飛田や三重県島は大したものなのか。全国あちこち、というのもあるが、妙に田舎じみているのも不思議2019/01/14
てくてく
13
摘発が進み、かなり変容してきているかつての売春街を探訪するという趣旨で、日本各地の青線が、その来歴とともに紹介されている。良いか悪いかは別として、売春で生活する女性が掘り起こされているあたりは読みごたえがあった。2019/01/05