出版社内容情報
「その赤子を今すぐ殺せ」実母の久子が放った言葉。戦国期に一時代を築いた信長は、生れ落ちた刹那の記憶を持っていた。母を憎悪しその呪縛に囚われ続けた新しい信長を描く歴史長編。(解説/末國善己)
内容説明
「その赤子を殺せ」生まれ落ちたその瞬間から実母・久子に呪詛されて育った信長。癇癪もちで傾いた姿で闊歩する“大うつけ者”は、元服直後の初陣で勝利する。十九のとき父・信秀が病に倒れ、死去。織田の家督を譲られた信長だったが、久子と弟・信行から壮絶な跡目争いを仕掛けられる―。親子の情を知らずに育ち、強くなりたいと切望し続けた、傑出の戦国武将の生き様を描いた歴史長編!
著者等紹介
天野純希[アマノスミキ]
1979年名古屋市生まれ。愛知大学文学部卒業。2007年『桃山ビート・トライブ』で第20回小説すばる新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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如水
30
やっぱり天野純希さんはハマる・・・面白い。合戦模様が分かりやすいし登場人物の心情が回りくどく無く、かつリアル、だからかなぁ〜。僕には合ってます。今回の話は『信長』。生い立ちから桶狭間の合戦迄、つまりは尾張を統一仕切れてない時の話です。母親との確執や『他人が自分の事をどう見てるか?』がポイントで超合理主義な一面がうかがえます。今のせちが無い世の中よりも『死』がスグ傍にある戦国時代。こんな信長がベースに有ると考えると後々の覇王っぷりは納得出来る。『暁』な信長が堪能出来る作品です。早く次の文庫でないかなぁ〜。2017/10/25
白きゅⅡ
23
初の天野 純希作品。「天下布武」を掲げて、天下統一に向けて進む三十代ではなく、誕生から桶狭間までの織田信長の幼少期、青年期を描いた歴史小説!テンポの良い文体で、時代小説の堅苦しさもなく、自分がとても好きな戦国時代ということもあって、楽しく読むことが出来ました!可能ならば、続編を描いてもらいたいと思います!★★★★☆2017/11/13
誰かのプリン
17
信長の弟信行を討つ小説は初めてです。★★★★★2018/10/13
木賊
17
桶狭間の戦いの辺りまでの、若き織田信長。母や弟(信行)との確執を軸に、後年の、人を機能として評価し、出自を問わない実力主義、残酷さといった性格が形成されていく過程を描き出している。その確執を切り捨てて前に進んでいく姿は、悲壮だが格好良い。一個の策謀家であり、兄と対峙する事で成長し、己を溺愛する母の手から離れて行く信行も、中々印象的だった。この作者様の描く後半生も読んでみたい。2018/08/04
Moeko Matsuda
16
こんな信長は初めてだ…!手に汗握る戦闘シーン、ジリジリするような調略の描写、どこを取っても最高にエキサイティングな作品だった。今までの天野作品を考えると、日本史上ほぼ一番くらいにメジャーな人物の話を書くなんて少し意外だったのだけれど、どうしてどうしてすごくリアルで人間らしい、この作品でしか読めないような信長の姿を見せてもらえた。彼の仲間はみんな格好良かったけど、特に滝川一益と帰蝶が魅力的だったなぁ。信行だって、ちゃんと強かった。乱世の時代、誰もが自分なりの正義でもって戦ってたんだよね…。2018/03/12