出版社内容情報
南下する辛晃が攻撃を仕掛けるも岳飛・秦容はさらに力を増し撃退した。一方、北で続いていた呼延凌率いる梁山泊軍と兀朮・胡土児の金国軍は総帥の首を賭けた最終決戦に臨む。(解説/細谷正充)
内容説明
七星鞭が吼え、胡土児が宙天に翻る。梁山泊軍と金軍は今、最終決戦の時を迎えようとしていた。米の不審な流れを追っていた南宋が陣家村を殱滅させた。致死軍に救出された蕭〓材(しょうけんざい)は、小梁山から金国にいたる広大な大地に、国の垣根を超えた物流網を整備していく。一方、北に蒙古という強敵の姿も見え始めていた。岳飛は南宋に残った臣下達との邂逅を果たす。新たな時代の胎動を予感させる第十一巻。
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年唐津生まれ。中央大学法学部卒業。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞を、85年『渇きの街』で第38回日本推理作家協会賞長編部門を、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞を受賞。また、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞を、06年『水滸伝』(全19巻)で第9回司馬遼太郎賞を、07年『独り群せず』で第1回舟橋聖一文学賞を受賞。10年に第13回日本ミステリー文学大賞を、11年『楊令伝』で第65回毎日出版文化賞特別賞を受賞し、13年に紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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W-G
279
梁紅玉の出会った、炳成世って一体何者?どう考えても日本人の名前ではないので、何かあるのかと、ネットで調べてみたら、どうも平清盛らしい。そう思って読むと、日本のパートが滅茶苦茶気になる。まさか梁紅玉がこんなおいしい流れを持ってくるとは。金と梁山泊の戦は、およそ想定の範囲内。面白くないわけではないが、どこか泥仕合じみてきている。そして、ここまで読み進めてきた読者ならば、誰もが食いつく秦容の結婚。もう少し熱い展開が欲しかったというのが本音。宣凱や王貴の時ほど、ほっこりする感じがなかった。2022/03/08
しんごろ
180
梁紅玉の話から静かに始まり、いつもと違う感じのスタート。しかし物語が一気に動く。蕭炫材が轟交賈の物流網の拡大、岳飛は南宋に残ってる部下に会うため旅に出る。西遼では蒙古が襲いかかり戦いが勃発。そして、梁山泊と金国の決戦。呼延凌の七星鞭、史進の鉄棒が唸りを上げ、金国は胡土児が宙に舞う。呼延凌と兀朮の国対国ではなく、軍人としてのプライドをかけた戦いに、北方水滸伝の醍醐味を見せつけられた。しかし、そんな戦いの凄さも忘れてしまう出来事が…。秦容、そりゃいきなりすぎて驚くわ。小梁山の仲間の絆と情の深さが微笑ましい。2020/08/14
future4227
60
金国軍と梁山泊軍の激しいぶつかり合い。更には兀朮と呼延凌の大将同士の一騎打ち。手に汗握る攻防、一瞬にして優劣が入れ替わる紙一重の間合い。呼延凌の七星鞭が唸り、九紋龍史進の鉄棒が吠える。そして、熱き好漢たちがまた死んでいく。2021/02/15
アルピニア
59
金軍と梁山泊軍が対決する。兀朮と呼延凌は、お互いの首を狙うが、今一歩のところで果たせず。双方とも重要な指揮官を失って引き分ける。岳飛は南宋で耐えて時を待っている岳家軍の兵士達と会い、「北に攻める」という志を噛み締める。宣凱、王貴、蕭炫材はおぼろげながらも同じ目標に向かって歩き始める。蕭炫材と兀朮が祖国について語る場面が心に残る。「梁山泊の人間の祖国は、替天行道という志」。死に場所を探しているような史進、李俊、呼延凌が気がかり。あと6巻。2022/03/07
眠る山猫屋
58
蕭さん、吹っ切れましたね。大陸全土に延びそうな貿易網へと夢を追う様、素晴らしい。それがまた梁山泊だけでなく、全ての〝民〟を想定しているとは。前半、呼延凌とウジュの身を削り血を流し尽くす、ヒリつく様な鍔迫り合い。胡土児、沙歇ら勇将を配する金軍は、まるでかつての梁山泊のようだ。そしてまた一人、梁山泊の重鎮が逝く。その最期の言葉は様々に採れる「こんなものか」というものだったが、きっと遣り切った感に満ちる意味合いだったのではないか。後半の岳飛、秦容、胡土児のエピソードには和む。2019/12/16