出版社内容情報
日本エッセイスト・クラブ賞受賞の名文家が目にした、イタリアの男女の恋愛。秘めた愛、禁じられた関係、屈折した恋……。男と女の関係は、世界中で普遍性があることに気づく一冊。(解説/野崎 歓)
内容説明
好奇心に満ち個性豊かなイタリア人の恋愛は、万華鏡のよう。秘めた関係を覆う、濃厚な薔薇の香り。絵に描いたような幸せの切ない顛末。きらめいて、でもすぐに消えてしまうシャンパンの泡に似た恋。老熟した愛は、すべてを赦す深い慈しみ…。解こうとするほどいっそうもつれる人間模様は、役者が次々と入れ替わる舞台さながら。イタリアの暮らしを通して内田洋子が綴った、15の恋愛物語。
著者等紹介
内田洋子[ウチダヨウコ]
1959年、神戸市生まれ。東京外国語大学イタリア語学科卒業。通信社(株)ウーノアソシエイツ代表。2011年、『ジーノの家 イタリア10景』で日本エッセイスト・クラブ賞、講談社エッセイ賞をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
429
男と女、惹かれあうのは理屈じゃない、とでもいうか。いや、そんなことは身をもってわかってるんだけど。内田さんの美しくそれでいてキレのよい文章で読まされると、救いようもない男と女の物語にも、どことなくほのかな光が見えてくる。2019/09/04
ヴェネツィア
381
文庫で再読。15の掌編からなる、いずれもちょっとビターな恋の物語。イタリアといえば、ナポリやカプリの陽光溢れる風土の中での情熱的な恋を連想しがちだが、ここに展開する物語はいささか趣きを異にする。舞台も、夏はともかく他の季節はなんだかほの暗くもあるシックで都会的なな街、ミラノ。若干の例外を除いては大人の恋である。しかも、その味わいはまことに陰影に富み、往々にして心のうちに悲哀の感情を内包する。それはミラノのモノトーンの世界にまことに似つかわしく、霧の中に沈潜してゆく恋の物語なのである。2020/11/10
アキ
57
内田洋子初読み。どれも小粋な15編の短編集。ミラノの朝のあわただしいバールの空気から神父にうっとりする信者。信者の見立てをする生地屋の店主の人生に場面はフォーカスしていく「白い花に気をつけて」をはじめとして、すっきりとした文章、小気味のいい展開、そして最後に人生の選択を見せつけられる。連載のテーマがイタリア式恋愛術。かの国では情熱的で、別れる時はドライな男女の関係が興味深い。表題の「どうしようもないのに、好き」でのニニの矜持と、「赤い糸」でバルバラが自分についた嘘。男と女は出会いの数だけ物語がある。2019/06/21
イオちゃん
39
アモーレの国、イタリア。恋に落ちたら、あっという間。例え相手が友人の夫でも‥。それだけに複雑な人間関係がありドラマが生まれるのかもしれない。時にクールに、時に温かい視線で、15の愛のドラマが語られる。幸せは束の間で、切ない話が多いのだけど、色々な情景を思い浮かべながら、読むのは楽しい。2017/09/01
ユメ
38
イタリアの濃厚な恋愛の香りがページから立ち上り、くらくらと息が詰まりそうだった。芝居のように情熱的な恋がそこかしこに秘められているイタリアの日々に圧倒される。このエッセイに登場する人々はすべて内田さんの知己ということになるが、彼女は過剰な思い入れを持って書きはしない。恋に狂って身を滅ぼす人への冷徹な眼差しすら感じさせる。だが、その冷たさはイコール否定ではない。むしろ、どうしようもない恋をしてしまう人たちへの肯定があると思う。それは、内田さん自身が、イタリアにどうしようもなく恋をしているからだ。2017/12/15




