出版社内容情報
明治二十年代中頃、東京の外れに佇む三階建ての灯台のような異様な本屋「書楼弔堂」。無数の書物が揃うその店で、時代の移り変りの中で迷える人々と彼らが探し求める本を店の主人が引き合わせていく。
京極 夏彦[キョウゴクナツヒコ]
内容説明
明治二十年代の半ば。雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠は、異様な書舗と巡りあう。本は墓のようなものだという主人が営む店の名は、書楼弔堂。古今東西の書物が集められたその店を、最後の浮世絵師月岡芳年や書生時代の泉鏡花など、迷える者たちが己のための一冊を求め“探書”に訪れる。変わりゆく時代の相克の中で本と人の繋がりを編み直す新シリーズ、第一弾!
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
小説家・意匠家。1963年北海道生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞受賞。16年遠野文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
153
弔堂という書楼を舞台にして高遠という人物を狂言回しにした6編の中篇連作小説集です。月岡芳年、泉鏡花、井上円了(中野の哲学堂公園にここに出てくる似た小さな建物があったような)、中濱万次郎・岡田以蔵、巌谷小波あるいは勝海舟など歴史上の人物を登場させて書物あるいは本の持つ意味などを説いています。私は好きな分野の本でした。あと一冊出ているようなので楽しみです。2020/01/15
扉のこちら側
144
2018年190冊め。設定とキャラクター描写が秀逸である。表紙の雰囲気からもっとドロドロした恐ろし気な内容と思っていたのだが、いい意味で裏切られた。明治という時代のほの暗さが好み。続編があれば読みたい。2018/06/20
ポルコ
139
しばらく京極堂シリーズを読めていないので、この弔堂シリーズが慰めになった。高遠さんも関口と同じく読者代表のように扱われ、読んでいて一緒に救われた気分になれる。弔堂から一冊の本を薦められたいものです。2017/02/21
stobe1904
123
明治時代の書楼弔堂を舞台とした連作集。泉鏡花、勝海舟、井上円了など明治の偉人たちが客として弔堂を訪れ、それぞれの迷い、悩みを店主が解き明かし、読むべき書物を処方するのがストーリーのパターン。百鬼夜行シリーズとは違い派手な事件は起きないが、京極堂を彷彿させる店主の洞察力、推理力の冴えは、期待を裏切らない出来栄えだった。ぜひ次作も読みたい。★★★★☆2017/06/06
sin
113
歴史上の人物を主人公にしてミステリ仕立てにする趣向は数多くあるが、これは文学史上の人物そのものを題材にするミステリーと言って良いだろう。久しぶりに味わう京極節、そのロジックの心地よさに酔いしれた。そして積ん読に新たな呼び名が増えた…墓である。本は“いんふぉるめーしょん”ではないと謂う、情報を伝えることはない、何故なら読む人間によって受け取り方が違うからだと、ならば時を新たにして同じ本を手に取った時、その境遇によってはその印象が変わって感じるのも宜なるかな、本は今その人の読む行為に寄り添って或るものだろう。2017/06/03