出版社内容情報
幻王・楊令が斃(たお)れ、梁山泊は洪水によって壊滅状態となった。金国は南進を、軍閥・岳飛がいる南宋は梁山泊を狙う三つ巴。大水滸伝・最終章『岳飛伝』待望の文庫全17巻刊行開始。(解説/原 泰久)
北方 謙三[キタカタケンゾウ]
内容説明
負けたのだ。「替天行道」と「盡忠報国」というふたつの志の激突だった。半年前の梁山泊戦。瀕死の状態の楊令に右腕を切り飛ばされた岳飛は、その敗戦から立ち直れずにいた。頭領を失った梁山泊は洪水のために全てが壊滅状態にあった。一方、金国では粘罕が病死した後、軍を掌握したのは兀朮。そして青蓮寺が力を失った南宋も混沌とした状態だった。十二世紀中国で、熱き血潮が滾る「岳飛伝」開幕!
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年唐津生まれ。中央大学法学部卒業。81年『弔鐘はるかなり』でデビュー。83年『眠りなき夜』で第4回吉川英治文学新人賞を、85年『渇き街』で第38回日本推理作家協会賞長編部門を、91年『破軍の星』で第4回柴田錬三郎賞を受賞。また、2004年『楊家将』で第38回吉川英治文学賞を、06年『水滸伝』(全19巻)で第9回司馬遼太郎賞を、07年『独り群せず』で第1回舟橋聖一文学賞を受賞。10年に第13回日本ミステリー文学大賞を、11年『楊令伝』で第65回毎日出版文化賞特別賞を受賞し、13年に紫綬褒章を受章。16年、第64回菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
275
タイトルが変わっただけで、物語自体は梁山泊のもの。時間も連続しており、何かが切り替わった感じがあまりない。そのせいもあり、梁山泊、特に軍が描かれる場面では、倦怠感が強く、ちょっと退屈。推しの秦容もなんだか暗い男になってしまった。今後の期待を抱かせる部分もたくさんあり、楊令伝時には、まぁ出来の悪いイメージしかなかった、王貴や張朔ら、第三世代が光りを放ち始めている点や、耿魁に范政、金軍側では、童貫に対する岳飛的なポジションとして、楊令の息子胡土児が兀朮の養子にと、新キャラ投入も抜かりがなく、期待は出来る。2022/02/09
しんごろ
188
金国は政事が不安。南宋は秦檜が事実上の実権。梁山泊はまとまりがないようでまとまっている。物語は静かに静かに動き出す。岳飛、兀朮(ウジュ)も楊令に与えられた敗北感を、楊令なき梁山泊の漢達も、哀しみ寂しさといった、どうにもならないもどかしさを感じてるようで、楊令なくても幻王として尚、君臨!やはり楊令はそれだけの漢だった。しかし物語はひたすら進む。呉用は圧巻なぶっ飛んだ事をしやがるし、史進は円熟のある渋さ、そして新たな漢も現れ、静かさにちゃんと熱さもあり切なさもあり、続きが気になりますね。2019/03/24
sin
63
『楊令伝』は楊令の死に依って終焉を迎えたが、『岳飛伝』は未だにその梁山泊の亡霊を引き摺っている。築き上げた梁山泊の重さに、育て上げてきた男達の処遇に物語はがんじがらめで、彼等は残党とはならず南宋や金に意識される存在として居残っている。 いっそのことそれぞれレジスタンスにでもなって暴れていれば腑に落ちるのに、豪傑達も分別臭く規律ある軍隊であることをやめてはいない。一方では主役の岳飛ですら思慮深い豪傑になって内省を顕にして、未だに手探りで物語の表に立とうとはしていない。破天荒が足りない❗2019/04/04
ポチ
60
新しい仲間たちが梁山泊に集う。洪水の足跡もやっと消えつつある中、どのように動き出すのか、岳飛の動きも含め次巻が気になる。2021/06/01
アルピニア
60
楊令亡きあと、梁山泊の統治も軍も貿易も淡々と続く。洪水の水がひき、一応呉用が頭領になったものの引き続き何の命令も通達されない。そのような状況で男たちは再び志に向き合う。登場人物達のおさらいのような章だったが、その中で新人「范政」と「耿魁」、「胡土児」が目を引く。漢達はこれから何をめざすのだろう。今まであまり気にしたことはなかったのだが、副題の三霊とはなんだろう三人の亡き頭領?2021/05/12