出版社内容情報
12年前の花火の爆発事故で、両親をなくした昇一は、突然の祖父の電話で故郷に呼び戻される。そこには、一人の女性が花火師の修業をしていた。鎮魂の花火に込めた思いとは……。(解説/北上次郎)
内容説明
花火には、二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか。幼い頃、花火工場の爆発事故で両親を亡くした昇一は、高校を卒業後、一人東京で暮らしていた。ある日、祖父から電話があり、四年ぶりに帰郷する。そこには花火職人として修業中の風間絢がいた。十二年前に不幸な出来事が重なった。それぞれが様々な思いを抱え、苦しみ、悩み、葛藤していく。花火に託された思いとは―。希望と再生の物語。
著者等紹介
美奈川護[ミナガワマモル]
1983年千葉県生まれ。2009年『ヴァンダル画廊街の奇跡』で第16回電撃小説大賞“金賞”を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
201
美奈川護さん、再生物を書かせたら凄い。花火職人、家族、花火工場の切なく優しい再生物語。花火には、一瞬で消えるか、永遠に残るか。人の想いも一瞬に消えるか、永遠の想いもあるのではないか。花火を作る仕事を通して、しかも田舎特有の風習もある中で、思いを遂げるために、花火を作る姿は美しく凛々しい。だからこそ、花火は一瞬で人に感動を与えてくれるのだろう。この舞台の町の祭りに行って、その想いを詰め込んだ高峰煙火の花火を見たい。もちろん、見たい花火は銀冠(ギンカムロ)!2019/08/08
おしゃべりメガネ
192
これまた予想以上に完成度の高い素晴らしい作品に巡り会えて、余韻にひたっております。集英社さんの「ナツイチ」フェアにて、その素晴らしい装丁にすっかり魅了され、自分の中でイチオシに購入した作品でしたが、期待をまったく裏切ることなく、予想以上に涙させられてしまいました。伝説の花火「銀冠(ギンカムロ)」を打ち上げるべく奮闘する人々を中心に描き、花火の仕組みや打ち上げ方法など花火にまつわる知識をわかりやすく、説明してくれます。しかもミステリー仕立てでありながら、感動もバッチリなのでこの時期にはピッタリな作品でした。2015/07/31
おしゃべりメガネ
139
四年ぶりの再読でしたが、やっぱり8月も折り返しとなった今時期に読むには本当にピッタリな作品だと改めて認識できました。'花火師'を主人公にしたお仕事小説ですが、ちょっとしたミステリー要素も含みつつ、何より傷ついたワケありの人間の苦しみや悩みの再生物語でもあります。本作を読むと間違いなく、花火の見方が変わるのだろうなぁと思います。花火師のセリフで『花火には二つしかない。一瞬で消えるか、永遠に残るか』とあります。どちらも頷けるセリフで、そんな素晴らしい花火にはきっと語り尽くせぬ思い出もたくさんあるのかなと。2019/08/17
シナモン
133
とても良かったです。花火を通して辛い過去と向き合い乗り越えていく昇一と絢。若い二人の頑張りに悲しい偶然が重なって生まれた地域のわだかまりも消えて読後感は爽やか。「五重芯」「銀冠」「万雷」「玉貼り」「試し打ち」など一つ一つの花火や製造過程の説明もその情景が目に浮かび、花火好きにはたまらない一冊でした。2022/09/04
mocha
98
久々に胸のすくようなお仕事小説を読めて大満足。わずか七秒のために命をかける花火師の覚悟と潔さがかっこいい。花火師を目指す女性の過去というミステリーと、一度は家業を捨てた四代目の奮闘が描かれる。そして、職人といえばやっぱり頑固な爺さん。濃紺の印半纏を翻す姿に泣けた。花火の描写がとても臨場感があって、美しい花火を見たくなる。今夏苦境に立たされているだろう花火師さん達のことを思った。2020/07/10