出版社内容情報
見知らぬアタッシェケースを預けられた男、自殺と断定された妻を殺害したのは自分だと主張する夫など、日常がふいに歪む瞬間を1600字で切り取った、芥川賞作家初の掌編小説集。(解説/中村文則)
内容説明
自殺と断定された妻を、自分が殺害したと主張する男。夫の浮気相手たちを殺す計画を立てる貞淑な妻。育児疲れの女に若い頃の自分を重ねる老婆。会社帰りに立ち寄ったバーで悪魔と隣合わせになった男。愚かで愛らしいその人々は、あなたのすぐ近くに存在するかもしれない―。何気ない日常生活が些細なことで歪みはじめる瞬間を、ブラックユーモアたっぷりに切り取った38編の掌編小説集。
著者等紹介
田中慎弥[タナカシンヤ]
1972年山口県生まれ。山口県立下関中央工業高校卒業。2005年『冷たい水の羊』で第37回新潮新人賞受賞。08年「蛹」で第34回川端康成賞受賞。同年「蛹」を収録した作品集『切れた鎖』で第21回三島由紀夫賞受賞。12年『共喰い』で第146回芥川龍之介賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
82
田中慎弥さんの描くショートショート。何気ない日常が歪んでいく瞬間を切れ味良く、ブラックユーモアに仕上げています。居心地の悪い作品が多いのは世の中への風刺とも取れました。2015/10/15
クプクプ
71
この本は中村文則の「惑いの森」のようなショートショート小説集です。田中慎弥は毒があり、頭が柔らかく、博物学や野球、政治に詳しいです。ひとつひとつの物語が読んでいる私の頭の中へ入ってきて複雑なあるいは単純な化学反応を起こしていく感じでした。特によかったのは「海星(ひとで)」という海釣りの話でした。私は海の餌釣りをしたことがないので、海釣りと山口県という土地に強い憧れを抱いた作品でした。2022/08/31
優希
44
再読です。ショートショートながら毒の味わいが濃いです。何気ない日常の中に潜む暗い部分を見事にユーモアへと昇華しているように感じました。居心地の悪い作品が多いのですが、そこが魅力でしょうか。世の中の風刺ともとれると思いました。2024/06/28
桜もち 太郎
5
38のショートショート。記憶が上書きされて頭に残らないが、きっと再読しても面白く読むことができると思う。日々の生活の隅っこを突くような作品が多かった。2017/07/03
hiratax
3
アルバイトを含んだ就業経験を持たない彼が、なぜここまで幅広いテーマを描けるのか。想像力の源泉が知りたい。2015/07/26