出版社内容情報
妹は美しかった。そっくりなのに、頬に黒子のある私は醜かった。黒子の有無で区別され、差別されて生きてきたのだが──。(『黒子の刻印』)。12の「色」をテーマに紡がれた、傑作短編集。(解説/加藤千恵)
内容説明
一人きりで目覚めてしまう明け方。私は人の声に触れたくて、知らない誰かに電話をかける。冷たいシーツの上、澄み切った夜明けの青い空気の隙間で溺れてしまわないように―(「顔色の悪い魚」)。色彩が、もし息子たちを生むのなら、五感は、常に心を親にしている。金、赤、青、紫、白、緑、橙、黄、灰、茶、黒、銀。心の中のパレットから選びだした言葉で描きだされた、12色の短編集。
著者等紹介
山田詠美[ヤマダエイミ]
1959年東京都生まれ。明治大学文学部中退。85年文藝賞受賞の『ベッドタイムアイズ』でデビュー。87年『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』で直木賞受賞。89年『風葬の教室』で平林たい子賞、91年『トラッシュ』で女流文学賞、96年『アニマル・ロジック』で泉鏡花賞、2000年『A2Z』で読売文学賞、05年『風味絶佳』で谷崎潤一郎賞、12年『ジェントルマン』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
93
面白かったです。モチーフになる色のある短編集。どの作品も鋭さと残酷さを秘めていました。傷つけることで傷つけ合う。そんなヒリヒリした痛みが心地よく入ってきます。それは人が人を愛する気持ちが込められているからだと思いました。歪んでいて、負の感情のベクトルが激しいほど愛を感じます。2016/08/03
テトラ
42
収められた12篇それぞれに潜む狂気。あるときはひっそりと、またあるときは震える程の熱情を湛えて。優越や劣等、聡明と卑屈、安穏と絶望、虚栄心、恍惚、生臭い血液、それらを薄い皮膚の下に隠して微笑んでみせる私たち。本当に恐ろしいのは人の心、制御不能の恋情と欲。人の本性の厭らしさや哀しさをあらゆる角度から見せ付けながら、12篇の物語は各々異なった色彩を有して行間を染めていく。私は何色だろう。自分で染まったのか否応なしに染められたのか。自ら飛び込んで苦しさに喘ぐのは滑稽、けれどその歪んだ幸福は余りにも甘美。2017/10/29
とも
10
様々な色がテーマということなので読んでみました。確かにそれぞれ印象的な色が描かれてたけど心の奥から沁み出てきた色ではなく主人公の外側のものだと感じてしまいちょっと物足りず。(網膜に焼き付いた残像とか空気中に漂うものとかそんなイメージ)句読点が独特で読み方のテンポがいつもと変わったような気がします。2015/03/04
桜もち 太郎
8
「色彩の息子」とあるように、すべての短編は「色」がテーマとなっています。正直何色かわかりませんが、それを抜きにしても楽しめる作品です。楽しめるといっても心弾む物語ではありません。良かったのは「発熱電球の嘘」。悲劇の主人公を演じる祥子は子どもの頃から嘘を通じて人を感動させる癖があります。最後の結末が以外で面白いです。多くの作品には正と負の対比があります。なかでも「雲の出産」は、スノップな連中にいけてないとし子が勝ってしまうのにはスッとしました。チョット苦手な作家でしたが、他の作品も手にしてみたいと思います。2017/01/07
パンダプー
8
再読。短編なのに全ての作品の憎いものの対象がほぼ自分と同じなのを思い知る。明日の予定がイヤな予定なので、心を落ち着けようと読んだものの失敗だ。2015/01/02