出版社内容情報
東京・向島の個人病院に勤める円乗寺先生。下町の人情が残る街を舞台に、わけありの患者たちとの交流を描く、ユーモアにとんだ心温まる医療短編集。幻の未刊行作品がいきなり文庫で登場!
内容説明
東京下町の個人病院に勤務することになった円乗寺優先生。堅苦しい大学病院から逃れてやって来た。専門は外科だが、内科、婦人科、何でも診ることとなる。酒好きな先生は、ある晩近くの寿司屋に入ったが、店の青年が自分の患者であることに気づく。彼は他人には言えない病気の持ち主だった―人情味あふれる仁術先生の診察と活躍を描く異色のメディカル・ユーモア小説。未刊行作品、ここに初登場!
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。70年『光と影』で第63回直木賞受賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で第14回吉川英治文学賞を受賞。2003年には紫綬褒章受章。14年4月逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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柊文庫本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
33
初読。2015年722冊め。読みながら円乗寺先生になんだか既視感。奥田英朗の描く「精神科医伊良部」がこんな感じだったな、と。こちらは昭和の下町の先生だしこちらの方が古い作品だけど。人情味溢れる医師と、「仁術」の描かれ方がおもしろい。2015/07/01
starbro
23
日本の文壇の巨匠だった渡辺淳一も40年前はこんなほのぼのした作品を書いていたんですね!予想以上に新鮮で楽しめました。2014/10/31
けいた@読書中はお静かに
20
ナツイチ文庫。「腰抜けの二人」が好き。渡辺淳一は「失楽園」や「愛の流刑地」みたいな男女のドロドロ憎愛劇というイメージがあるんだけど、軽いコミカルな小説も書くんだなー、と思って初出を見たら1970年前半。まだ作家として若いときの作品みたいです。人情味溢れる作品ながらもシモ系の話ばかりなので、医療系の話が好きな母に勧めていいものかどうか迷ってます。2015/08/23
こういち
17
著者が語る、医療行為にスポットを当てた小説が好きだった。流れるような筆致は、まるで紅葉に彩られた葉先が、一条の風にそよぐ柔らかさと艶めかしさを表し、人間という生き物の強さと弱さを教えてくれた。本書の主人公・円乗寺医師の、大学病院で講師を勤めながらもそれを辞し、下町の小さな診療所に身を置く設定は、常に著者の生き様が行間に満ち溢れ、医療とはヒューマニズムの結晶であることを思い知る。これまでの作品を辿りながら、著者の境地の一端にでも到達できたなら本望だ。2014/10/03
nyanlay
12
内容的には面白い、とは言い切れないけれど昔の(30年位前)町医者には、こういう先生いたよな、と。懐かしむ訳ではないけれど、医者も人間的だったと思います。そういう意味では、若い読者には合わないかも。2016/09/22