出版社内容情報
定年後のバラ色の人生を信じていた威一郎を待っていたのは、家族との深い溝だった。娘は独立、妻は家を出てしまい、残ったものは犬のコウタロウだけだった。現代の夫婦像を見つめた異色の長篇。
(解説/藤田宜永)
内容説明
大手広告代理店の上席常務執行役員まで務めた大谷威一郎。関連会社の社長ポストを蹴って定年退職した。バラ色の第二の人生を思い描いていたが、待ち受けていたのは夫婦関係と親子関係の危機。そして大きな孤独だった。犬のコタロウが側にいるだけのさみしい日々がつづく。人生最大の転機を迎え、威一郎の孤軍奮闘が始まる。定年退職後、いかに生きるかという一大社会問題に肉迫した異色の傑作長編。
著者等紹介
渡辺淳一[ワタナベジュンイチ]
1933年北海道生まれ。札幌医科大学卒業後、母校の整形外科講師となり、医療のかたわら小説を執筆。70年『光と影』で第63回直木賞受賞。80年『遠き落日』『長崎ロシア遊女館』で第14回吉川英治文学賞を受賞。97年に刊行された『失楽園』は大きな話題をよんだ。2003年には紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
相田うえお
103
★★★★☆21065【孤舟 (渡辺 淳一さん)】なんだかしっかり読んでしまったなぁ〜という実感を持って読了。ある意味、人生のハウツー本でも読んでしまった様な感覚です。大手に勤めて重役にまで上り詰めた男性が主人公。そんな人でも辞めてしまえば極普通の一般人。何をしていたとか立派な肩書きなどはもう過去のこと。その男性の日常を覗いているうちに、逆にそこからどう過ごしていくか?常日頃の夫婦のあり方?など、しみじみ考えてしまいました。渡辺淳一さん、初読みなんですけど『失楽園』を書かれた作家さんでしたか。2021/07/14
つぼ
33
定年後も会社時代の役職や武勇伝を振り翳すのはみっともない。気を付けようと思ったが・・自身の気づかないところでやっちゃってるかも・・2018/05/24
mio217
27
定年退職後、家族との穏やかな生活を夢見ていた威一郎。しかし、現実は妻から疎まられ、子どもから相手されず、何も趣味がなく、唯一の話し相手は飼い犬のコタロウ。とうとう妻と子は家を出で行き・・・。定年後の団塊の世代のおじさまが何とも滑稽で可笑しくて(笑)、そして可愛くも感じ、リアルな面白い話で一気読みしました。渡辺さんに男女間の心理を描かせたら右に出るものはいないですね、流石です。しかし、ほんと、男ってどうしようもないですね、、(⌒-⌒; )(笑)まあ、でも、男性を少し理解できました!2016/03/03
まるぷー
23
大手広告代理店常務を定年退職した大谷威一郎だが、家ですることもなくゴロゴロの毎日を過ごす。しかも、現役時代の癖か、妻を召し使いのように扱き使い、子供たちにも疎んじられ、やがて妻も主人在宅ストレス症候群になり家を出る。食事や家事を一切できない威一郎、何をやっても身に入らず、デートクラブに出会いを求める。この辺りからヒヤヒヤし、また滑稽さも感じられた。仕事一筋もいいけど、やはり趣味がなければこのような顛末になるのか?男と言えども料理のひとつくらいと。家庭で威張り散らす威一郎には好感が持てず。 2019/03/27
じん
18
エリートサラリーマンの定年後の自分探し?のお話。若い女性とデートクラブで知り合って、なんとか実らせようとするんだけど、なかなか上手くいかないところが滑稽で、どこか可愛いような、寅さんのようなおかしみがある。目的、目標がない日々ってのは、やっぱり、いかがなものかと思うタイプの人は多いのだろう。※男は年齢とともに親友を失い一人になっていく。稀に親友がいたとしても、社会的地位と、経済力も同じくらいでないと成り立たないが、60歳も過ぎると、そんなケースはまずありえない。なんとも、男は孤独な生き物である。p71※2018/09/13