出版社内容情報
豪農の鈴木はネパール女性と結婚し全財産を失う。失踪した妻を探し神の山へ。転落の快感か再生の愉悦か、迫力の山本周五郎受賞作。
内容説明
豪農の息子・結木輝和は外国人花嫁斡旋業者の仲介でネパール人のカルバナ・タミと結婚し、言葉の通じない妻を淑子と呼んだ。従順だった淑子が神がかり始めると、信者と名乗る人々が結木家に集まってきた。惜しみなく与える淑子によって全財産を失った輝和は…。生き神様となった妻に翻弄された輝和が、辿り着いた再生の境地とは!?現代人の根源を抉る社会派大作。第10回山本周五郎賞受賞作。
著者等紹介
篠田節子[シノダセツコ]
1955年、東京都八王子市生まれ。東京学芸大学卒業。90年『絹の変容』で第3回小説すばる新人賞を受賞。97年『ゴサインタン』で第10回山本周五郎賞、同年『女たちのジハード』で第117回直木賞、2009年『仮想儀礼』で第22回柴田錬三郎賞、11年『スターバト・マーテル』で第61回芸術選奨文部科学大臣賞、15年『インドクリスタル』で第10回中央公論文芸賞を受賞。19年『鏡の背面』で第53回吉川英治文学賞受賞。20年、紫綬褒章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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道楽モン
38
1950年代生まれの女流小説家三人(愛を込めて三ババと呼ぶ)といえば高村薫、桐野夏生、篠田節子。時代を反映させつつ、多様な宗教の神話的構造を作品化(寓話化)し、煩悩に由来する人の弱さへの慈愛的眼差で、小市民や虐げられし人々、救済されるべき者たちを描いている。三ババの圧倒的筆力は、綿密な取材に裏付けられた情報を駆使し、莫大な熱量によって作品を紡ぎ、読者の人生を変え得る名作を残してきた。本書もその一冊。読むべし。流行のミステリ作家しか読まない若き読書子は、これらを読んで打ちひしがれるべし。そして再生せよ!2024/11/16
コニコ@共楽
19
読み友に前から「絶対面白いから!」と薦められていた本。篠田さんの本を読むのは3冊目。そのエンタメ性と細部の描写に魅せられ、600ページ強という長さにも関わらず期待にたがわず一気読みでした。地方の名家で農家を営む男性が嫁の貰い手がなくネパール人をお嫁さんにするのですが、その女性が神がかりになり……30年前の日本のバブル期の作品ですが、経済状態だけでなく、精神的な「失われた30年」を感じさせる話でした。幸せとは何かも考えさせられます。2025/02/09
きょちょ
18
山本周五郎賞受賞作。主人公は40になろうとする日本人。集団見合いでネパールの女性と結婚。彼女は「神がかり」であった。日本語も片言しか覚えられないのだが、神がかると流暢な日本語、そしていろいろ人助けをするが、主人公の財産まで勝手に使ってしまう。この先一体どんな話になるのか?と思っていたら、「神がかり」が無くなって彼女は消えてしまう。当初迷惑がっていた主人公は、経験を積んで彼女に惹かれ、彼女を探すためにネパールへ。最後がとても良いから、それまでの話は許そう(笑)。ショーシャンクの空にを思い出したね。 ★★★2025/04/11
momo
11
第10回山本周五郎賞受賞作。厚い文庫本を見るとつい手にとってしまう癖があり、それが本書を読んだ動機でした。主人公の結木輝和のダメ男ぶりに辟易しながら読んでいたところ、物語の途中から成長していく 姿が感じられて思わずひきこまれていました。日本の社会のいくつもの問題を背景にして、なぜ人々がカルバナ・タミのもとに集まってきたのかが描かれていて味わい深い物語です。物質的な豊かさや、依存していれば得をするという関係ではなく、結木輝和が最後に求めたものがなにであったのかを知ったときに本書の素晴らしさを感じました。2024/06/10
okk
8
分厚くてかなり読み応えがあったけどおもしろくてあっという間に読んでしまった。前半はホラーが強かったけどネパールに行ってからは別の小説みたいだった。色々な社会問題がちりばめてあって考えさせられる。ラストもとてもよかった。2024/05/27