出版社内容情報
高瀬 隼子[タカセ ジュンコ]
著・文・その他
内容説明
「子ども、もらってくれませんか?」彼氏の郁也に呼び出された薫は、その隣に座る見知らぬ女性からそう言われた。薫とセックスレスだった郁也は、大学時代の同級生に金を払ってセックスしていたという。唐突な提案に戸惑う薫だったが、故郷の家族を喜ばせるために子どもをもらおうかと思案して―。昔飼っていた犬を愛していたように、薫は無条件に人を愛せるのか。第43回すばる文学賞受賞作。
著者等紹介
高瀬隼子[タカセジュンコ]
1988年愛媛県生まれ。2019年『犬のかたちをしているもの』で第43回すばる文学賞を受賞してデビュー。22年『おいしいごはんが食べられますように』で第167回芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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さてさて
212
同棲している彼から告げられた衝撃の告白の先に主人公・薫が悩みを深くしていく様が描かれるこの作品。そこには、幼き頃に飼育していた愛犬『ロクジロウ』を思う気持ちに今を重ねる薫の感情の変化が描かれていました。あっという間に読み終える物語に想像以上の奥深さを感じるこの作品。“女性の息苦しさみたいなもの。その息苦しさを理解して書いていたというよりは、むかつくなという気持ちで書い”た、とこの作品執筆時のことを語る高瀬隼子さん。終始息苦しさを感じさせる物語の中に、作品の書名が意味を持って浮かび上がる印象深い作品でした。2023/06/21
美紀ちゃん
124
高瀬さんのこの本すごいと思う。イライラ小説を書かせたらナンバーワンだと思う。単行本で読んで、文庫本で読んでこの作品を読むのは2回目なのだが好き。当事者だったら、毎日頭の中がグルグルして本当にしんどいと思う。成り行きに流されたく無い。選択権は自分で持っていたい。だから、私が当事者だったら侑也とはサヨナラしたい。これ一生辛いと思う。だったら1人で生きて行ったほうがまし。気持ちの整理って難しい。2024/02/16
fwhd8325
122
芥川賞受賞作は読んでいませんが、受賞作よりもそれ以前の作品の方が評価が高いこともあります。物語は、ありえないだろうと言う展開に驚きつつ、それが自然と流れていくことに引き込まれていきます。これも今という時代なのでしょう。ちょっとクセになりそうな作家さんです。2022/11/12
ケンイチミズバ
121
彼の子供だけれど私の子供ではない。私の体を気遣って彼は外に子供を作りました。女から子犬のようにあげると言われた。子供が欲しいとは一度も聞いたことがなかった私のとても切ない気持ちと、泣いて弁解する男。どうなるのか。三人の考えが普通ではないところがあるが、これがパズルなら組み合わさる。あげるとかもらうとか、子供はモノじゃない。ゲームみたいにクリアするとか非常識な会話がドトールで展開する。しかし、不快な思いにとらわれながらも彼女が最後にどう判断するのかに引きずられ読んでしまう。文体も含めて上手いと思ったが。2022/09/05
いたろう
86
「おいしいごはんが食べられますように」で、2022年上半期・芥川賞受賞の著者のデビュー作。恋人の郁也と半同棲をしていながら、セックスが嫌いでセックスレスだった薫は、ある女性から、郁也の子供を妊娠したから、生んだらもらって欲しいと言われる。一見、とんでもない提案だが、郁也にも一緒に育てようと言われ、悩み始める薫。薫は一体どうするのか・・・。犬のかたちをしているものとは、薫が愛していた犬のロクジロウに具現化される「愛」のことなのか。ラスト、この後どうなる?という余韻を持たせた終わり方に、いろいろ想像が膨らむ。2022/11/10