出版社内容情報
関口 尚[セキグチ ヒサシ]
著・文・その他
内容説明
小5の眠人は、昼間から酒に溺れる父を避け、夜まで公園で過ごす毎日。唯一の理解者は、家庭に事情がありながら元気に過ごす同級生の竜征。ある日、公園の東屋に女子高生が来て、三線という沖縄の楽器を弾き始めた。眠人はその音色に魅了される。彼の人生に新しい風が吹いた瞬間だった。出会いと別れ、友情と恋、進路と自立。理不尽な現実に立ち向かうあなたの心にやさしく沁みる、青春小説。
著者等紹介
関口尚[セキグチヒサシ]
1972年、栃木県生まれ。99年、茨城大学大学院人文科学研究科を修了。2002年、『プリズムの夏』で第15回小説すばる新人賞を受賞して、作家デビューする。07年、『空をつかむまで』で第22回坪田譲治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
39
面白かったです。父親を避けるように夜まで公園で過ごす眠人が三振と出会い、成長していく物語でした。音色に魅了されていくことは眠人の中に新しい何かが生まれたということでしょうね。理不尽なこともあるけれど、癒されることも多いと教えてくれるような青春小説でした。2023/12/28
Jun Sasaki
26
寡作な方なのか、十年ぶりくらいの著者作品。家庭に恵まれない小学五年男子が、ある女子高生と三線に出会ったことをきっかけに、未来を切り開く物語。それぞれの時代ごとに陰の部分を持った人物が出てくるけど、終章に向かって回収されていく様子が良き。暗いサイドに落ちきらずに日々を過ごせば、いつかは未来切り開かん、というメッセージ。視点は異なるけど、重松清「めだか、太平洋を往け」のようなやさしさも感じる。 2023/02/26
たぬ
21
☆4.5 すごく良かった。主人公は眠人だけど竜征もさくら子も、春帆もみんな主人公のように丁寧に描かれていた。子供の頃はどうしようもなかったことが成長するにつれてできるようになる。別の方法を見つけられる。自分なりに消化できるようになる。仲間っていいな、青春っていいな。時には泣きそうになりつつ読み終えた。2023/02/01
陽ちゃん
5
酒浸りの父親を避けるために夜まで公園で過ごす11歳の眠人が、紆余曲折を経て23歳になるまで。父親が酒とパチンコに逃げるため家にお金がなく、同級生を避けがちな眠人の唯一の友達である竜征、眠人に三線を教えてくれて「逃げてくるんだよ」と言ってくれた女子高生の春帆、眠人たちの同級生で恵まれた容姿を持つも超あがり症のさくら子、公園で知り合った人たち、そして、高校で出会ったスミレ。彼らのお陰で闇から抜け出し健全な大人になったんでしょうね。これから、存分に人生を謳歌してほしいな。2022/11/04
Nori
3
家庭に事情がある少年が三線と出会い少しずつ変わっていき、成長していく連作短編集。すごく心に響く物語でした。作中にあるように、線を引くような人間にはなりたくないし、線を引かれてもそこを越えていけるような人間になりたいと思う。それがどんなに難しくても。そしてハッとさせられたのが「逃げていいんだよ」と「逃げてくるんだよ」の違い。僕もその言葉をいうときは「逃げてくるんだよ」と言える人間でありたいと思う。2023/03/18