出版社内容情報
木内 昇[キウチ ノボリ]
著・文・その他
内容説明
「この国の岐路を、異国に委ねちゃあならねぇ」黒船来航によって鎖国から開国へと急展開した幕末。江戸に呼び戻された若者・田辺太一は、幕府が新設した外国局での書物方出役を命ぜられる。前例のないお役目に四苦八苦。攘夷を叫ぶ世間からは非難され、上役の水野忠徳は気難しい。そんな中でも鼻っ柱の強い彼は、物腰の異人たちと渡り合ってゆく―。史実を背景に日本外交の幕開けを描く長編。
著者等紹介
木内昇[キウチノボリ]
1967年、東京都生まれ。出版社勤務を経て独立。インタヴュー雑誌「Spotting」を主宰し、単行本、雑誌などでの執筆や書籍の編集を手がける。2004年に『新選組幕末の青嵐』で小説家デビュー。09年、第2回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞、11年『漂砂のうたう』で第144回直木賞、14年『櫛挽道守』で第9回中央公論文芸賞、第27回柴田錬三郎賞、第8回親鸞賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
96
木内さんの日経新聞に連載されていた小説です。連載の時は読んでいなかったのですが、やはり読み通すとかなりこの主人公やそれを取り巻く人々、幕末からその後の時代の日本の外交についての楽しい読み物になっています。江戸時代末期の初期の外交を担った人々のそれぞれの性格(主人公の上司の水野、岩瀬、井上、勝)が様々でまとめていくのも大変であったようです。安政の大獄や薩長の邪魔などが淡々と描かれていて、主人公が新政府の役につくところで終わっています。実在の人物だそうですがまるっきり知りませんでした。2024/01/13
piro
38
開国に揺れる幕末、外国方として登用された田辺太一の半生を描く物語。歴史上の脇役である一役人を主人公に、そして勝麟太郎(海舟)ら主役級を脇役に配した、ある意味豪華な歴史小説でした。長く、濃密なお話で読了に時間がかかってしまいましたが、次第に傾いでいく幕府にありながら、必死に国家のアイデンティティを護ろうと奮闘する太一の姿に心揺さぶられます。偏屈者の上司・水野筑後守忠徳とのやり取りは、時に微笑を誘いつつ、真理が散りばめられている様な会話で実に興味深い。幕末の新たな一面を見る事ができた気がします。2023/06/29
Y.yamabuki
20
幕府側から見た幕末外交という視点が興味を引く。外国局の役人 田辺太一 (実在)の目を通して描く幕末外交。当時の幕府にも有能な人材はいたが、上手く活用できなかった。旧態依然の組織にイライラしながら、根気良く他国と相対した太一達幕府側の外交官。攘夷派や朝廷と他国との間に挟まれて、よく頑張った。倒幕派は外交面でも強かだった。ただ、他国からの侵略を防げたのは幕府が長く安定した世を築いのが一因かも。何れにしても、太平慣れした組織は外部から壊す必要があった。幕臣水野の台詞「日本を仏国や英国と同じに造り替えてはならぬ→2025/01/21
こうちゃん
10
読み応え、たっぷり。幕末から明治にかけての異国との外交に係る話。 話的には同じような場面や、またこの展開か・・・と思うところもあったが、読み終えてみれば実際にそうだったのだろうとも思える。 今の社会、仕事への向き合い方にも通じる金言も要所々々であり、勉強になる本でした。2025/04/18
あつ子🐈⬛
7
「命を落とす方も多いと聞いておりますのに、異国なぞ」 「江戸にいても辻斬りに遭うやもしれません。馬に跳ねられる、うっかり井戸に落ちるということもありましょう。必ず安泰ということはこの世のどこにもない。ならば私は思うたことをしたい。己の心のままに生きたいのです」
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