出版社内容情報
蒸し暑い満員電車。ふと、冷たい手が僕に触れた。それは間違いなく、数か月前に死んだ嫁の手だった──。感動の短編集、全7編。
目次
朝の満員電車、ふと冷たい手が僕の手に触れた。「死んだ嫁の手や」。生きているとき、いつも手助けしてくれた手。二度目はエレベーターの中で声が聞こえた。「間違いない。嫁が来たんや」。結婚して間もなく癌でこの世を去った彼女が幽霊になっても伝えたかったこととは(表題作)。夫婦、親子、カップルなど、誰かを想って一途に生きる人々を描く全七編。読むと優しい気持ちになれる“大人のおとぎ話”。
著者等紹介
加藤元[カトウゲン]
1973年神奈川県生まれ。2009年『山姫抄』で第4回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっ!chan
24
あとがきで作者は「大人のおとぎ話を書きたかった」と書いている。物語は親子や家族、恋人達の離婚や不倫など日常の行き違いから生まれた、ある意味取り返しのつかなくなったような出来事や事件からこじれた関係を、なんとか元に戻せないかともがく姿を描いた短編集。どの話も決して幸せなエンディングを迎えるわけではないけど、でもホッとする気持ちがわくような読後感は味わえます。そして解説で作者は「本当に欲しいもののために、つらい選択をして手放す事を知る事ができた人間は誰よりも幸せだ。」と言っています。わかります。2023/04/02
ナオ
6
再読。帯にある大人のおとぎ話だとすると、少しだけ切なすぎると思う。メンタル弱ってる時に読むと染みすぎるとゆーか。7つの短編からなる作品だけど、それぞれ主人公は何か屈託を抱えていて、ラストも解決はしないけど、それありきで、そこから進む感じはある。誰かにとっては寄り添ってくれる、暖かい作品集ではあると思う。2023/03/11
TOMTOM
4
短編集。物語によってはどうしようもないけれども憎み切れない人やつながりが紡がれ、どの話も沁みます。2022/08/07
マシンガン
2
家族や身近な人とのこれまでの関わりと転機のときの変化を、主人公の心情を中心に描く短編集。対象となる人はしょーもないヤツが多いが、しょーもないと云いながら離れられない主人公がいじらしい。関西弁が醸し出すいいニュアンスが、作品全体を温かく包んでいる。2023/11/05
oanchan
2
なぜこの本を読もうと思ったのか思い出せないけど、思い通りにいかない人生とか、理屈なくしょうもない男と縁が切れない人の話が沁みた。2023/07/01