出版社内容情報
米兵や多くの観光客が訪れた売春街はなぜ「浄化」運動で消されたのか? 沖縄の“もう一つの戦後史"を描くノンフィクション。第4回沖縄書店大賞大賞受賞作。
内容説明
2010年代初め、「沖縄の恥部」とまで言われた売春街が、浄化運動によって消滅した。戦後間もなく駐留する米兵たちによる性犯罪や性病の蔓延を緩和するための色街だった。著者は売春に従事する女性、風俗店経営者、ヤクザに綿密なインタビューを敢行。なぜ米兵や県外の観光客までこぞって遊びに訪れた色街は消されたのか?沖縄の“もう一つの戦後史”を炙り出す比類なきノンフィクション。
目次
序章 眩い街へ、妖しい光へ
第1章 消し去られた街、生の痕跡
第2章 変貌する夜に生きる者たち
第3章 闇社会の収奪システム
第4章 娼婦とヤクザと革命―幻の映画『モトシンカカランヌー』の「アケミ」を捜して
第5章 歴史の底に置かれた売春女性―佐木隆三が見た沖縄
第6章 「レイプの軍隊」と沖縄売春史
第7章 売春街の子どもたち
第8章 浄化の論理と、夜の身体と
終章 作家・沖山真知子の記憶
文庫版追補章 『Aサインデイズ』の記憶―生き抜く狡智とつかの間の共存
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆいまある
82
兎に角書き遺しておこう、後に資料となるものを。という気迫が伝わる頁数。長い。戦時中、日本の捨て石にされた沖縄。米兵のレイプから人々を守るために作られた売春地帯。総てを失った人が、生きる為に身を売る。浄化の名の元に街が潰される。今は知的に低く貧しい人が、ヤクザに騙され沈められる街(いつでもどこでも繰り返される物語)。更に見捨てられた奄美、宮古の人々。売春を失くせと声高に叫ぶ人よ、踏みつけられた人々の声を聞いたか?利用され、傷つけられ、それでも生き伸びようとする声を聞いたか?汚い仕事なんてこの世にはない。2023/09/20
たまきら
39
コザ出身の友人が「また日本人に沖縄がレイプされた」とすごく怒っていた本を、手に取りました。私個人は彼に見下した感情はないんだと思う。けれども彼女がそう感じてしまうのは実名を使ったビビッドなレイプ犯罪の記述かもしれないし、買う側に位置した男の自己正当化のような表現を感じるからかもしれない。日本人が書いているからかもしれない。今も続く不公平な現実が生むもので、作者とは無関係かもしれない。知ってほしい。けれどもこんな風に書いてほしくないということなのかもしれない。来月彼女が来たら話そう…。自分の中でも未解決。2023/11/17
巨峰
37
重い本だけど、沖縄の歴史やそこで暮してきた人を知るには、欠かせない一冊かも知れない2023/08/12
kawa
31
真栄原新町や吉原など売春を売りの沖縄の特飲街が、2010年代初頭相次いで外部圧力で消えてしまった。そんな街を訪ねた筆者が、戦後からそこで生きてきた人々の姿を掘り起こす。売春部屋の襖越しで生活する老夫婦(生活のための間貸し)、売春の住み込み女性は大家と家族同然等、ビックリ話しが多数。「(彼女たちがいたからこそ)戦後の沖縄を支えてきた」ロックバンド・紫の宮永英一氏の言が印象的。離島出身と米国人を親に持つハーフで売春街で育つ差別の三重苦を背負う彼。なんだか米国とそっくりの差別構造。(19年・沖縄書店大賞) 2025/03/22
二人娘の父
12
文庫化にあたり新たに一章が追補された。これにより当時の米国民政府の政策的意図がより鮮明になっている。初読の際もかなり衝撃を受けたが、再読した今回も新鮮にまた読み飛ばしていた事実など改めて認識することができたことは収穫だった。著者の粘り強い取材と揺るがないヤマト人としての視点に、大いに学びたい。本書で明らかにされる事実は、沖縄県民でも知らない人が多数であろう。いわんやヤマト人は、である。歴史の中で決して忘却してはいけない事実を記録することの意味をかみしめたい。次に渡沖した際には真栄原地域はぜひ歩いてみたい。2022/01/28
-
- 和書
- おぞましい二人