出版社内容情報
吉田 伸子 ヨシダ ノブコ シーナ ストアーズレポート 犬の系譜 吉川英治文学新人賞 アドバード 日本SF 岳物語 家族のあしあと ナマコのからえばり
内容説明
戦後の気配がまだ色濃い時代、千葉の幕張に引っ越してきた大家族の椎名家。小さな生き物が息づく干潟が広がる土地で「ぼく」は小学生になった。豊かな自然のなかを飛びまわり、家には4人のきょうだいたちがいて食卓はいつも賑やかだった。そんな当たり前の幸せな毎日だけど、我が家にはフクザツな事情が隠されていて…記憶をたどりながら、あたたかくも脆い「家族」の風景を綴ったシーナ的私小説。
著者等紹介
椎名誠[シイナマコト]
1944年6月東京都生まれ。東京写真大学中退。世界の辺境地区への旅をライフワークにしている。79年、エッセイ『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。88年『犬の系譜』で第10回吉川英治文学新人賞、90年『アド・バード』で第11回日本SF大賞受賞。映画監督作品に『白い馬』など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@読メ野鳥の会・怪鳥
82
椎名さんの「エピソードゼロ」とも言える幼少期の私小説。当時の記憶を辿りながら書いている為か、「岳物語」のような生き生きとした描写には欠けるのは否めない。でも学芸会での活躍やトロッコ列車での冒険、父親が亡くなる前に市場で蟹を買って食べた話などシーナ少年の「黄金の日々」が綴られている。「家族全員で顔を合わせていられる時間はわずかなものだ。家族という基本はあたたかく強いつながりであるはずの集団は、実はあっけなくもろい記憶だけを残していくチームなのだ。」と言う彼の言葉には本当にそうだなぁと感じている。★★★+2020/06/26
ドナルド@灯れ松明の火
20
椎名誠の自叙伝とでもいうのか。小さい頃の出来事・思い出を淡々と描いている。椎名さんの幼少期の状況が手に取るようにわかる。岳物語の「誠」版かな。 お薦め2020/12/20
時代
13
椎名さんの家族の話。なんと幼少期の記憶。チチ、ジイジイときて、シーナ少年かぁ。非常に複雑な家庭の事情があったようだが、幼少の少年には分からないので語られない。訥々とじーんと来る感じでした△2020/05/27
Mingus
7
幼きシーナの回想録、岳物語のシーナ版なのだが、60年以上前の朧げな記憶をこうも鮮やかに描けるものかと舌を巻いてしまう。少年のシーナが裏山に行ったり海に行ったりするだけで、ファンとしてはむしろ当事者感覚に近い懐かしさすら覚えてしまう笑 胸を打たれたのは蟹を食べなさいの章で、学芸会でひょうきんな役を演じるぼくがみんなに面白がられる一方で、賑やかだった家族に差す翳りと、口数少ない父との交わした僅かな会話、言われるがままひたすら蟹を貪る純真無垢なぼくに、涙なしでは読めない。そして挿絵の沢野さんがいい味だしてます。2020/05/31
鰍メバル
6
シーナ少年がまだ今のシーナさんの片鱗を見せる少し前の幼少期からの自伝的私小説。5、6人の仲間と集まってちょっと危なっかしい遊びを見つけては楽しむその姿は、その後のシーナさんを彷彿させる。2021/01/27