出版社内容情報
コウはソーセージマイスターのレイモンと国際結婚。戦時中に函館で、庶民の健康に貢献。実在のレイモン夫妻の信念と愛情の物語。
内容説明
大正末期の函館。旅館の娘コウは客のレイモンと知り合う。ソーセージ職人で缶詰の指導に来たドイツ人だ。恋した二人は天津まで駆け落ちし結婚。チェコで開いた店は繁盛するが、コウの望郷の念を察したレイモンは函館での開店を決意。だが、肉食習慣のない日本人に受け入れられず、戦争が外国人に過酷な仕打ちを…。健康で平和な暮らしを実現しようとソーセージ作りに奮闘する夫婦の愛と信念の物語。書き下ろし歴史小説。
著者等紹介
植松三十里[ウエマツミドリ]
静岡市出身。昭和52年、東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社編集局入社。7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、フリーランスのライターに。平成15年「桑港にて」で歴史文学賞受賞。平成21年「群青日本海軍の礎を築いた男」で新田次郎文学賞受賞。同年「彫残二人」で中山義秀文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんごろ
176
函館名物『函館カール・レイモン』。ハム、ソーセージ、ベーコンは美味しくて、たまに買いますが、そのレイモン夫妻の話。頑固なレイモンを、コウがしっかり支える姿はまさに内助の功。戦争による仕打ちや困難、そして様々な苦労を乗り越えて、今なお道産子に愛されるカール・レイモンの美味しいソーセージを作ってくれたレイモン夫妻に感謝。そして、レイモン夫妻がいなければ、日本ハムのシャウエッセンも発売されなかったんだな。すぐにでも、カールレイモン商品を買って、ビール片手にソーセージをツマみたいね。2020/05/04
ゆみねこ
98
カール・レイモンと言うドイツ人青年は本場の美味しいソーセージやハムを日本に伝え、北海道で畜産を振興させ日本人の体位向上健康増進と言う大きな目標を掲げる。それを支えた妻のコウ。日本人に獣肉を食べる習慣のない時代、戦争やユダヤ人弾圧、欧州統一運動も絡み近代日本史の側面からも興味深い。大会社にレイモンさんの魂が引き継がれていたことを知り嬉しくなった。お薦め本!2021/04/11
あすなろ
80
植松氏の作品にハズレなし。これが文庫書き下ろしで読める嬉しさよ、という作品。氏のあとがきを読めばこの熱も理解出来るところがある。大正時代の異国情緒溢れる函館から駆け落ちして海外へ。そして紆余曲折を経て函館へ再び。ソーセージを作る大きな手に導かれた運命がこうとある日本企業の一部となって受け継がれているとは全く知らなかった。文庫書き下ろしでは勿体ない、でも、文庫書き下ろしならではで、もっと広く読まれ、伝播されて欲しい素晴らしい作品だったと思う。2020/09/22
いたろう
74
函館に住んでいた子供の頃、カール・レイモンさんと言えば、函館の誰もが知る函館在住の有名な外国人だった。そのレイモンさんの日本人の奥さん、コウさんの視点から描かれるレイモンさんと家族の物語。レイモンさんが函館でソーセージを作るようになった経緯、レイモンさんと奥さんの結婚は駆け落ちだったこと、戦争を挟んで、レイモンさんと家族が、山あり谷ありの人生を送っていたことなど、初めて知った。レイモンさんもその家族ももう函館に残っていない中、カール・レイモンのソーセージが、今でも函館の名物になっていることをうれしく思う。2020/08/10
あつひめ
67
函館のソーセージというイメージがあるカール・レイモン。こんなに美味しいからみんながすぐ受け入れたかと思ったら…異国の地で故郷の食べ物を広める苦労があったとは。商品制作の他にもたくさんの悩みがあるのは一般家庭と同じかもしれない。レイモンさんのこだわりがあったからこそ、それを後継者に引き継ぎ美味しいソーセージがたくさん売られるようになった。レイモンさんを支える妻の思い。時には涙をこらえたこともあるだろう。妻コウさんの心意気があればこそのカール・レイモンかもしれない。函館に行きたくなった。2021/02/16